21-1(56)

 ―7番村・とある洞窟にて―



「よ~ ゲンタ、調子はどうだい! レアストーン採れたか?」

「実は今日も全然なんです」とオレは男にカラッポのザルを申し訳なさ

そうに差し出した。

「何にもねぇじゃね~かよ」

「す、すみません」

「お前達、真剣にやってるのか? まさか掠めてんじゃねぇだろうな」

「かすめるって?」

「つまりこっそりポケットにしまうって事だよ」

「そ、そんな事出来ないですよ、お互い監視し合ってるんだから」

「まぁ、そうだよな。それにしても連日ストーンが見つからないって事は

もうこの洞窟は諦めた方がイイかもな」

「そ、そうですね。オレ達もさっきそう話してたとこなんですよ」と男から

のしっ責をなんとか免れた事にオレは内心肩をなで下ろした。

「オイ、ゲンタ!」

「は、はい!」

「この村のレアストーン流通量はどれぐらいなんだ?」

「えっ?」

「つまり、この村の連中はどれぐらいレアストーン持ってるのか聞いてん

だよ!」

「そうですね、ショ―タが結構制限してたけど一人最低1個は持ってるん

じゃないですか。まぁ安いのも含めてですけど」

「ということは連中のストーンをかき集めればそこそこの量になるって

ことだな……」

「そりゃ~ かなりの量ですよ!」

「そうだな……とりあえずそいつらから頂くとするか」と男はいつもの

不敵な笑みを浮かべた。

「じゃ~ オレ達が手分けして連中から強引に奪い取るってことでイイ

ですよね!」と腕まくりをするオレに男は深いため息と共にその場に腰を

下ろした。

「だからお前はダメなんだよ!」

「えっ? オレ何か間違ったこと言いました?」と男同様その場に座り

込むと男は呆れたような目つきで話題を変えた。

「ところでお前、選挙活動ちゃんとやってるのか?」

「えっ、まぁ、やることはやってるんですけど……」

「なんだよ、その歯切れのなさは」

「ちょっと人気がないっていうか……反応が良くないんですよね、実は」

「まぁ、ムリもないか」とある程度納得ぎみの男はオレに今まで採れた

全てのストーンを持って来る様命じた。


 ストーンでぎっしり詰まった布袋に男自ら手を突っ込み、鋭い目つきで

幾度となく確認した後、男の口から飛び出した思いもよらぬ提案にオレは

自身耳を疑った。


「オイ、ゲンタ!」

「は、はい!」

「このストーン全部村の連中にくれてやれ!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る