20-2(49)

 いきなり免税店のようなお店が建ち並ぶ中、僕は地図片手にバス乗り場

へと向かった。

 空港のような建物を出てすぐ右側にバスの形をしたマークがホログラム

のような光を発し回転するのが目に飛び込んで来た。


「あれか~ 観光客が一番緊張する最初のシーンだから極力目立つよう

工夫されてるんだな、きっと」とちょっと感動し思わず口にしてしまった。

 列に並ぶこと数分、バスが到着し一番運転席に近い席に座り運転席を

覗き込むとあまりのシンプルな計器類にちょっとした驚きを覚えたが、

バスが動き出すとその驚きが更に倍増することとなった。

 えっ……、コレってまさか自動運転??

 僕は興奮のあまり車内を見渡すと観光客は僕だけなのか乗客誰一人驚く

ことなく、静かに本を読んだり景色を眺める様子に僕は少し恥ずかしさ

を覚え思わずすまし顔で前方に視線を移した。 

 そっか~ 感動してるの僕だけか~ ん? なんか変だな……、あれ?

そういえば誰も携帯いじってないぞ。まだこの町じゃ開発遅れてるのかな。

 僕は車内から今度は窓に顔をくっ付け外の様子を伺うことにした。

 目に映る町並みは特区に比べ圧倒的に緑が多く、車やバイクの数も

今のところゼロでほとんどが自動運転仕様のバスが中心のようだ。

 建物に関してはどちらかと言えば無個性で、以前ナオちゃんが言ってた

ように機能性重視のデザインというところか…… でもちょっと地味かな。

 ただし歩いてる住人の服装はあまり流行に左右されないのか結構個性的で

統一感がまるでなくバラバラなのに、こうしてバスから空を含め全体で

捉えるとなぜかしっくりマッチしてしまうのがなんとも不思議だ。

 その後も僕は飽きることなく新鮮な風景を堪能すること約10分、彼女

から教えて貰った専用インフォメーションがあるバス亭に到着した。

 僕はクーポンで支払いを済ませ地図片手にとりあえず辺りを見渡すと、

バス亭同様どの角度からも見えるホログラム仕様の看板のおかげで迷う事

なく無事目的地に到着した。

 早速中に入るとキャッシュディスペンサーのような機械が正面に2台

置かれてあり僕は空いてる右側の前に立った。

【FIND-P】と書かれたこの機械は捜したい人の現在の居場所を特定し、

現住所、電話番号までもプリントアウトしてくれるという個人情報保護

に厳格な特区では到底考えられないサービスだが果たして上手く機能

するのだろうか……。

 僕は画面に沿ってまず名前の入力、次に性別そして年齢層を選択し

検索ボタンを押すと〈……FINDING〉画面に切り替わりしばらく待つと

画面一面に女性の顔写真がアップされ、その後3秒ごとに次々切り替わり

始めた。

 お~っ、凄いな、このサービス!

 僕は次々切り替わる写真を瞬きと共に見続け51枚目にしてやっと

レイちゃんにたどり着いた。


「レイちゃん久しぶり~」小声で囁き、僕はすぐさま【実行】ボタンを

押すと再び〈……FINDING〉画面に切り替わりそのまま画面を注視して

いると僕の過度な期待を裏切る〈電源が切られています〉の表示が。

 電源? 

 僕はポケットからおもむろにさっき彼女から借りたGPSチップを取り出

し側面を見ると電源スイッチがONとなり緑色ランプの点灯を確認した。 

 これか~ ということは……、会えないってこと?


(え――っ! せっかくココまで来たのに――っ!)


 画面を前に悔しさ滲ませ心の中で絶叫するなんて彼女はやはり僕の中で

かなりのウエイトを占めていたようだ。

 そんな僕の心の叫びから遅れること数分、突如隣からまるでそれを

リフレインするかのような叫び声が飛び込んで来た。


「うっそ――っ! なんでよ――っ!」


 隣をチラ見すると若い女性がもの凄い形相で画面を食い入るように

見つめ固まってるようだが関わりたくない僕はすぐさま視線を元に戻した。

 

(分かるな~ その気持ち。分かるよ~)


 辛さを分かち合えたからなのか僕は徐々に冷静さを取り戻し、今度は

ナオちゃんを先ほど同様検索にかけてみた。


……

…………


 検索の結果、画面に現れたのは〈旅行中・7番村〉の表示。

 あれ? ナオちゃんが僕の村に? 確か彼女既に8番村は体験済みなのに

どうしてまた似たような村へ?

 僕は画面を前に腕を組み、首をしきりに傾げてると突然隣の女性から

声掛けられた。


「へぇ~ 彼女今7番村へ旅行中なんだ」と勝手に画面を覗き込んでくる

彼女に対し「うん、だぶんね」と僕は素っ気なく答えた。

「7番といえば確か私の知り合いが7番村で暮すって言ってたような……」

と彼女は僕と同じように腕を組みし始めた。

「誰なの?」と僕は特に興味はないが一応聞いてみた。

「ソラちゃん、うん! そう、ソラちゃんよ!」

「……えっ! ソラちゃんの知り合いなの?」


 ―瞬のうちに僕のテンションは急上昇し彼女のことが気になりだした。


「僕、ショ―タって言うんだけどキミは?」

「モエよ、モ~エッ!」

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