20-3(50)

 偶然出会ったソラちゃんの知り合いの女性はまさにミカちゃんを彷彿

とさせるお喋りで終始僕を圧倒し、前半は口を挟む機会さえ与えてもらえ

なかった。 

 彼女によると数年前まで18番の町で暮していたらしいが18歳特有の

青春&恋愛パワーに疲れ果て、その後特区を生活の拠点としていたらしい。

 ところが最近再び彼女の好奇心に火が点き、ループライン乗車中にもう

一つの路線の噂を聞きつけ、ココに来るまでに相当沢山の町や村を訪れた

ようだ。

 そんな彼女も特にこの町のことは気になっていたらしく彼女にとって

今日が滞在最終日らしい。


「ねぇ、ねぇ、ショ―ちゃん聞いてる?」

「うん、さっきから黙って聞いてるじゃんか」

「この町って結構開放的だよね!」

「開放的?」

「そう、だって普通みんなこっそり出入りするもんでしょ。中には

暗証番号いるトコあんのよ~ ショ―ちゃん知ってた?」

「知ってるよ、当然」

「な~んだ、知ってたの。じゃ~ 希望すればこの町に永住出来るって

知ってた?」

「えっ! そうなの? 観光しか出来ないんじゃないの?」

「ヘヘッ、実はね、ちゃんと講習受けて試験と面接に合格すればっていう

条件付きだけどね。ちなみに回数制限は設けてないみたいよ」

「へぇ~ 回数制限ナシってところは良心的だよね!」

「統計によると比較的番号が若い村ほど合格率が高いらしく、性格別

路線にある町によっては未だ合格者ゼロって町もあるみたいよ。まぁ、

特区と同じように町が発展するには色んなタイプの人間を受け入れる

必要があるんだろうね」

「ショ―ちゃんは講習受けるの?」

「受けないよ~ だって僕、村長だもん。ところでモエさん、さっき誰

捜してたの?」

「実は昨日ね、とっても素敵な男性とすれ違ったの。ちょっとだけ

気になっちゃって……ヘヘッ!」

「そ、そうなんだ」(何が恋愛に疲れただよ、うそつき)

「あ――ッ! もうこんな時間、ショ―ちゃん、まったね~」と両手を

交互に振りながら彼女は一瞬で僕の前から姿を消した。


 一気に静まり返った空間に呆然と一人立ちすくむ僕は旅の疲れなのか

突如酷い倦怠感に襲われ、そばにあるソファーに倒れ込んでしまった。

 もちろん肉体的な疲労もあるが精神面もかなり影響しているのは間違い

なく、その後容態は悪化の一途をたどり次第に目の前が暗くなり始めた。

 身の危険を感じた僕はゆっくりその場で横になり軽く目を閉じたが最後、

その後の記憶が一切途絶えてしまいあえなく僕の観光初日が終了した。

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