2-7(10)

〈ファ――ン!〉〈ファ――ン!〉


「あっ! あの音は……、電車が到着したんだわ!」

 私は慌ててトンネル付近まで近づきショ―ちゃんの帰りを待った。


「あっ! 微かに足音がする! きっとショ―ちゃんだわ!」


「ショ―ちゃ――ん!」


 私はトンネルに向かって大声で叫んだが反応がなく代わりに

背の高い美男子がトンネル奥から颯爽と現れた。


「やぁ! キミかい、叫んだのは?」

 

 私は恥ずかしくない下を向いたまま「うん」「うん」と頷いた。

「ショ―ちゃんって人、待ってたの?」と男性に覗き込まれると

さらに恥ずかしくなり耳を真っ赤にし再び「うん」と頷いた。

「残念ながら電車には僕以外誰も乗ってなかったんだけどその

男性とはぐれちゃったの?」と優しく話してくれる男性につい心

許してしまった私は安心しペラペラと内情を喋ってしまった。


「そっか~ 黙って付いて来ちゃダメだよ~ 今頃7番村のみんな

心配してるよ、きっと」

「うん、そうかもね」

「もしかしたらショ―タさん、点検中の電車を諦め、僕が今乗って

来たループラインで特区に向かったかもね」

「えっ? 2つの行き方があるって事?」

「そうだよ、もし良かったらこれから僕が案内してもイイよ!」

「えっ! ホントにイイの?」

「もちろんだよ!」

「ヤッタ――!」


 私は素敵な彼に手を引かれ、もう1つの改札に向かい既に到着

していた列車に仲良く乗り込み発車を心待ちにしていると彼から

小さな白いカプセルと飲み物をを手渡された。


「コレ何?」

「特区は空気が薄いから飲んでおいた方がイイよ」

「うん! 分かった」


 彼に好意を抱いていた為か何の疑いもなくそのカプセルを口に

運んだ私は次第に意識が薄れ、まるで長椅子に吸い込まれるような

状態で深い眠りについた。

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