2-5(8)

「はっ! ワタシ寝ちゃってたんだ……」

「ショ―ちゃん、まだ電車見てんのかしら?」

 私はこっそり窓を覗き込みホーム全体を見渡した。


「あれ? ショ―ちゃんがいなくなってる!!」


 ホームに飛び出し慎重に左右確認するも誰もいないと確信した私は

無意識のうちにホームに響き渡るほどの大声で叫んでした。


「ショ―ちゃん!」

「ショ――ちゃん!」


「どうしょう……大変なことになっちゃった!」「ショ――ちゃん!」


 すると次第に改札方面の階段から足音が聞こえだし、若い女性が

こちらに向かって歩いて来るのが見えた。

 すかさずその女性は「どうかされたんですか?」と心配そうな顔で

声を掛けてきた。

「ショ―ちゃんがいなくなったの、ショ―ちゃんが」と取り乱す私に

その女性は落ち着いた様子でショ―ちゃんの特徴を聞いてきた。


「ショ―ちゃんは……え~っと……」

「いいのよ、焦らなくて。例えば服装とか、どうな感じだったの?」

「あっ! ポンチョにキレイな鳥の羽いっぱい付けてた! 赤や緑の」

「そう、でも私さっきまで15番の町にいたけど見なかったわね」

「じゃ、どこに行っちゃたのよ」

「そうね、私が思うにきっともう1つの改札じゃないかしら」

「もう1つの改札?」

「そう、ココ15番駅と繋がるもう1つのループラインがあるのよ」

「えっ! そうなの?」

「そうよ」「いまから確認しに行きましょ」と私の手を引き奥にある

暗いトンネル付近にまでたどり着いた。

「これ、もしかしてショ―ちゃんの?」と拾った赤い羽根を私に

見せてくれた。

「そう! それショ―ちゃんの、間違いないわ!」

「彼きっとこの奥にある改札方面に向かったんだわ」と彼女はトンネル内

を指差した。

 だだトンネル内は足場が悪く危険ということなので私はこの場で待機し

彼女の帰りを待つことにした。

――

―――

――――

 しばらくすると彼女が戻って来たが彼女一人だけでショ―ちゃんの姿は

なかった。


「ホーム全体捜してみたけど残念ながらいなかったわ。だぶん間違って

電車に乗っちゃったかもね」

「え~っ! そんなぁ~」

「大丈夫、心配しないで。あのループラインはココ15番駅にしか

繋がってないからきっと1週して戻ってくるわよ」

「ホントに?」

「ええ、ホントよ、ふふっ!」

「なんか色々ありがとねっ! ふ~っ」 

 安心し笑顔が戻った私に彼女はさまざまな質問を投げかけて来た。


「これからどこに行くの?」

「トックよ!」

「どうして特区なの?」

「ワタシの村はスゴクいい村なんだけど色々遅れてるの」

「遅れてるって?」

「だって冷たい風が出る機械もないし、自動で人や物を運ぶ機械もね。

それでショ―ちゃんが仕組みを勉強したいって言うからワタシも付いて

来ちゃったの」

「村思いなのね、2人とも」

「ショ―ちゃんはそうだけどワタシはネっ、そんなんじゃ……」

「ずいぶん正直ね!」

「へへっ!」「ワタシ、ミカって言うの! おねえちゃんは?」

「私はユミよ、よろしくね!」

「ところでミカちゃんは何番の村なの?」

「7番よ!」

「ユミねえちゃんは?」

「私はVって町よ」

「ぶぃ?」

「ちょっと待ってね」とゆみねえちゃんはバッグから〈V〉の文字が

記された白い木の皮を見せてくれた。

 私は〈V〉の文字よりむしろ薄く滑らかで真っ白な木の皮に興味を惹かれ

じっくり眺めてると「その紙持っててイイわよ」との彼女の言葉に即反応

してしまった。

「えっ、イイの?」

「どうぞ、でもそんなに珍しいの?」

「うん! だって村じゃもっとデコボコしてるんだもん」

「ふ~ん、そうなんだ。じゃ~ メモ代わりに使ってね!」

「うん、ありがとね!」と私はすぐさまポケットにしまいこんだ。


 その後も私たちはしばらくの間おしゃべりを楽しんだ後ユミねえちゃん

は反対側ホームへ向い彼女とお別れし、私はホームのベンチに腰掛け

ひたすらショ―ちゃん帰りを待つことにした。


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