定期報告 6


第六の月 某日





『アーヴェー・アーヴィー。


 おひさしぶりです、リディアさん。

 この声、わかりますよね。


 どうぞ。』







「――アーヴェー・アーヴェー。


 助かりました。そちらから連絡を入れてくれるなんて。

 おひさしぶりです。旅地通信社西方調査団団長、ディーン・ライム様。


 どうぞ。」








『アーヴェー・アーヴィー。

 相変わらず淡白ですね。

 まあいいです。


 もちろんあなたのことです。この通信の意味、分かっていただけますよね。どうぞ。』






「アーヴェー・アーヴェー。


 ええ。そうですね。

 確信を持って私に通信を繋いできたところをみるに、あなたが使っているのは普通の鉱石ラジオではなく、マルカスの六つ子ラジオなんでしょうね。

 五つまではこちらが所在を知っている。その情報も、元旅地通信社の人間であるあなたなら知っていることでしょう。


 つまり、今あなたが使っているのは、最後の六つ目のラジオ。

 やはり新政府のほうで隠し持っていたのですね。

 どうぞ。」





『アーヴェー・アーヴィー。


 ご名答です!

 いやあ、さすがですねえ!

 しっかり状況を見透かしてらっしゃる。いやあ、連絡を入れてよかったです。


 ぼくとしてはね。別に裏切った気持ちはなかったんですよ。


 元々ぼくの家系は王家の騎士として三代くらい前から登用してもらえていたので忠誠心はそれなりにありましたし。

 ただ、ただただ王家に従うだけ、というのは、本当の忠誠ではないとも思っていました。

 王家の方々が、そのときそのときで一番よい選択肢を選べるよう、お支えできればと思って。


 今回だって、ぼくはリディア様と新政府の橋渡しのつもりだったんです。

 ぼくがラジオを奪ったことも、新政府にとっては誤算だったはずです。

 あの大統領、今頃泡食ってぶっ倒れてるかもしれません。いやあ愉快愉快。


 さて、ここからが本題です。


 ぼくといっしょに新政府側に来てはいただけませんか?


 さっさと儀式を終わらせて――王家の義務を、全うしましょう?




 どうぞ。』






「アーヴェー・アーヴィー。



 一つ、言わせてください。

 あなたの言い分はわかりました。

 けれど。




 どうして、私の行動をあなたに決められなくてはいけないのでしょう?




 そのあたりのことを、今一度考えてもらえると嬉しいです。






 とはいえ、新政府の妄言にはほとほと呆れていましたので、あなたの案には載って差し上げます。

 面倒なことはさっさと終わらせましょう。




 安心してください。あなたとわかった時点で録音は止めています。記録も残しません。

 旅地通信社のほうにも、何も伝えずにおきましょう。

 なにかあればまた連絡をください。

 どうぞ。」



『アーヴェー・アーヴィー。



 ……はは。確かにそうですね。

 気分を害されたのでしたら謝罪します。

 ご配慮くださりありがとうございます。計画については追って連絡させていただきますので、今日はこれにて。


 長々とありがとうございました、リディア様。

 ――いえ、正式にお呼びしないといけませんね。

 リディア・セン・ルーシャルニード王女殿下。



 それでは、今日はこれで。失礼いたします。』

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