第五の月

また来世

 第五の月 海の日


「アーヴェー・アーヴィー。


 こんにちは、記録係さん。

 

 そちらの星って、どこにあるんでしょう。

 私の住んでいる星はとっても辺境で、ドン・ブラスコ星系図にも載っていないぐらいの場所なんですが。

 そもそも、この星に来るにはちょっと特殊な航路を通らないといけないんです。

 

 ワープホールって、そちらにもありますか?

 通ってみないとどこにつながってるかわからないし、行先も変わることがあるそうで。だいぶ不安定で。

 私のいる星に来るには、ある時期にしか現れないワープホールを使うしかないそうです。

 普通の航路を通ると三百年かかるって。


 だから、私たちは基本的に宇宙に出るという選択肢がありません。

 宇宙船すら、二、三年前に不時着したのを助けて、初めて存在を知ったくらいです。


 実は、私もその船に乗っていたんですって。

 まったく覚えてないんですけどね。


 確かにこの星の風景に見覚えはないし、私自身、目覚める前のことは何も覚えていなくて……。


 でも、このラジオの使い方だけはよく知ってたんです。

 不思議ですよね。……なにか、思い入れがあったのかなあ。

 なんにも覚えてないけど、でも、唯一残されたものだから、ちょっと使ってみたくなって。

 

 覚えてます。この通信があなたに届くのは一回限りだって。

 この通信を切ったら、もう三百年会えないかも、なんて。


 宇宙って広いですね。





 私以外の宇宙船のクルーも数人、まだこの星にいて。

 船長さんとかは、母星の救難船に乗って先に帰りました。他の人達はここに残るか、第二段の救難船に乗るか、迷っているみたいです。

 



 この星、穏やかで好きです。

 過ごしやすい気候で、緑が多くて。病室の外の山、いつか行ってみたいなあ。

 もう、私はここから出なくてもいいと思ってます。

 覚えていない故郷に苦労して帰っても、疎外感しか生まれない気がして。

 だったらいっそ、ここで第二の人生始めようかなあ、って。


 


 あと三ヶ月したら、ワープホールが開くそうなので。

 それまで、ゆっくり考えます。




 聞いてもらってありがとうございました。」

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