はじまりと終わり

第四の月 大人の日


「アーヴェー・アーヴィー。



 こんばんは、きろくがかりさん。

 わたしはイオっていいます。


 このラジオはね、お父さんからもらったの。

 お父さん、お仕事に行ったっきり帰って来なくて、いま、お母さんも探しに行ってるんだ。

 わたしはおばあちゃん家で待ってるの。


 おばあちゃん、早く寝ちゃうから、夜はつまんないんだ。

 だから、ちょっとお話いいですか? どうぞ。」





『アーヴェー・アーヴェー。

 イオさん、はじめまして。

 わたしもイオさんのお話聞いてみたいです。

 イオさんの住んでいる星の事、教えてもらってもいいですか。どうぞ。』







「うん! ――じゃないや。


 アーヴェー・アーヴィー。

 わかりました!



 わたしの住んでる星は、むかし、じゅうりょくいじょう? っていうのがあって、お空にたくさん島ができました。

 わたしもそこに、住んでます。


 お空の島は、つないでおかないと風で流されちゃうの。

 だから、大きな島には小さな島がたくさん、つながれてて、

 どうしても動かしたくない島は、大きな棒を星の根っこのほうからのばしてつないでるんです。


 きろくがかりさんにも見てもらいたいなあ。


 あのね、島がどこにあるか、地図にして書いてあるんだけど、

 上から見た図だけだと、どのくらいお空の上にあるかわからないから、

 場所と、高度? がわかるように書いてあるんだって!


 他の星の地図を見たことないから、どう違うのかよくわかんないけど。

 でも、お父さんが作ってるの。だからすごいの。

 宇宙の星の地図を勉強して書いたんだって。



 この間もね、別の島にそくりょう? に行ってたの。

 そのときに、流れ島が来たんだって。


 あ、流れ島っていうのは、紐でつないでない島のことなの。

 別の島からはぐれちゃったり、遠くから流れてきたりしてるんだって。

 そういう島は、すぐに保護しないといけないんだ。


 お父さん、島を紐でつなごうとして、向こうに行って、でもそのまま島をつなげずに、どこかに流されちゃったんだって。


 あとでとっても怒られるから、失敗しないようにしなくちゃ、って言ってたのに。


 お父さん、帰ってくるかなあ……。





 ……そういえばね。

 むかし、絵本で読んだことがあるの。

 流れ島には生まれるところと、最後に行くところがあるんだって。

 お父さんはいつも流れ島の生まれるところに行きたいって言ってたけど。

 もしかしたら、先に最後に行くところに行ってるのかも!



 あーあ。探しに行きたいなあ。

 わたしもいろんなところ見に行きたい!


 ねえ、どう思いますか? どうぞ!」




『アーヴェー・アーヴェー。



 そうですねえ……。

 わたしも、追いかけたい気持ちはわかります。

 でも、お父さんを追いかけて、イオさんが怪我をするのも大変ですから。

 お父さんが帰ってくるまでいい子で待って、お父さんが帰ってきたら一緒に流れ島ができるところを見にいけばいいと思いますよ。どうぞ。』






「――アーヴェー・アーヴィー。

 そっかあ。

 うん。そうする。

 お父さんにも、お母さんにもおばあちゃんにも、悲しくならないでほしい。


 きろくがかりさんの言うことちゃんと聞くよ。



 だから、あんまり夜更かししないことにする!

 じゃあ切ります! おやすみなさい!」



 おやすみなさい。よい夜星を。

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