第四の月

おとぎ話

 第四の月 靴の日


「――は? 旅地通信社?

 なんだそりゃ。

 こっちはよくわからん機械押しつけられて困ってんのよ。まったく、こんな価値のないもん渡しやがって。」


『……お言葉ですが、あなたが持っているのは鉱石ラジオと申しまして、ある星系のみでしか作られていないものになります。

 つまり、うまく売りさばけばそれなりの値段になりますよ。どうぞ。」


「あ? 姉ちゃんこの機械に詳しいんだな。

 まあ、俺には必要なさそうだし、どっかで売りさばくわ。

 突っかかってごめんな、姉ちゃん。

 姉ちゃんも大変だな、こんなよくわからんやつの相手しないといけないなんて。

  

 ところで旅地通信社ってのは何をやってるんだ?」


『……旅地通信社はその鉱石ラジオの製造をしています。私の仕事はラジオを通して様々なお話を収集することです。どうぞ。』


「はぁー。そうなんか。

 ごめんな、話って言われてもぱっと思いつかねえや。

 せっかくだし、姉ちゃんの話、なんか聞かせてくれや。」


『……そうですね。

 私の住んでいる星は国が一つだけあって、ちょっと前まで王様の治める王国でした。

 あるとき、機械職人に恋をしたお姫様がいまして。

 お城に自分の作品を献上しに来た職人に一目ぼれして。でも身分の違いがあったので、表向きは思いを秘して生きていこうと思っていました。


 けれど、お姫様はどうしても職人が忘れられなかったんです。

 

 お姫様はある臣下に嫁がされそうになったとき、ついに決心して職人のところに逃げました。

 男のほうは最初迷惑そうにしていましたが、見捨てることもお城に返すこともできず、とりあえずお姫様を匿うことにしました。

 自分のパトロンの貴族も巻き込んで。


 やがて二人は結ばれました。

 姫は事故で記憶がないと偽って、いち市民として男と結婚して、子どもを設けました。

 

 これでめでたし、めでたし。

 で、終わればよかったんですが。


 王国は、共和主義者によって打倒されてしまいました。

 革命です。


 王家と革命軍の闘いは多くの市民を巻き込みました。

 二人の子供も、逃げる途中で大けがをしました。足が瓦礫にはさまってしまったんです。

 すぐに治療しないといけないくらい、重症でした。

 けれど、二人は身分がばれてしまうことを恐れていました。

 二人は娘を治療院に預けて、どこかへと消えました。

 

 その後、二人がどうなったのか知る人はいません。


 娘は足を失いながらも職を手に入れ、共和国になった祖国にまだ住み続けています。

 いつか帰ってくるかもしれない両親を待ちながら。


 

 これで終わりです。どうぞ』



「なーんか煮え切らない話だなあ。創作にしてはツメが甘いぜ。

 もっとよく考えたほうがいいぜ。」



『……はは。

 わかりました。精進します。どうぞ。』



「おう。じゃあな姉ちゃん。こんなおやじに付き合ってくれてありがとよ!」


『はい。お元気で。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る