月光
第二の月 レンガの日
「アーヴェー・アーヴィ。
こちらはヨナ星系主惑星。ちょうどお昼の鐘が鳴ったくらいです。
ところで今、旅地通信社っておっしゃいましたよね。
――すごい、本星の人と繋がったのは初めてです!
あ、本星というのはポロ星系のことでして。
ぼくみたいな鉱石ラジオファンにとっては聖地みたいなものなので。ええ。
思えば鉱石ラジオと出会ってはや十年。お金を貯めて何台も買っては繋がり方を検証したり、手当たり次第につないではどのぐらい遠くの星までつながるか実験したり、一度に何人と会話できるか試してみたり、いやあ話しはじめたら止まらないですよねははは!
(以下略)
このまま鉱石ラジオのことを一晩語明かすのもいいんですが、せっかくつながったので、是非ともわが星の話を!
うちの星はテラフォーミングに失敗しまして。
元々は岩石だらけの荒野しかなかったそうなんですが、今は九割がた海になりました。
ははは。生態系ぶっ壊れてますよね。
唯一の大陸に住めるのはお金持ちだけなので、ぼくみたいな一般市民は船の上か水上都市に住むしかないんです。
ぼくは普段大陸の近くの浮島に住んでます。大陸に近いほど治安がいいんで。
で、たまに知り合いの船に乗って二か月くらい沖のほうに行くんです。
この星にはハンターって職業があって、そういう人たちはチームを組んで沖合に新しい島がないか探しに行くんです。
衛星写真見れば一発なのに、そういうんじゃないって言われちゃうんですよね……本当に物好きだなあ……。
ぼく? ぼくは沖合に出ては鉱石ラジオの通信にどのくらい影響があるか計測しに。
嵐の甲板に縛りつけてもらって通信しましたけど特に問題なくつながりましたよ。
そうやって船に乗っていると、面白い景色がたくさん見られるんです。
海全体を照らすほどの夜光虫とその中を泳ぐ透明クジラの輝きとか。
透明だから食べた夜光虫の光がクジラの形になるんですよ。
星空もいいですよ。三つの月が交差する瞬間はなんとも言えなかったなあ。あの時だけは昼間のようで。
流星群も見ました。お祈りの数が足りないくらいのやつ。
そういえば、夜光虫は空から降ってきた星が生まれ変わったものらしいです。そういう神話があって。
――神話は好きですよ。読み物の原型として面白いです。
他にも、――そうそう。うちの惑星の周りをまわっている月。
神話では三つ子の神なんですが。生みの親である闇の神をたおすために、三柱は空に上って自らを光らせて、この世界に光をもたらしたんだとか。
今でも元気に光り輝いてますよ。
他の星でも、月に関する神話は結構あるみたいですね。
こういうの調べてると本当に時間を忘れてしまって――。
……あ。昼休み終わってた。
はは。まあいっか。
普段は自宅で働いているので。切羽詰まった案件もないし、良ければこのままもう少し話していますね。
そうだなあ、あ、この間豪華客船と同じサイズのイカが現れてね――――――、
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