第二の月
定期報告 2
第二の月 シクラメンの日
「アーヴェー・アーヴィ。
『旅地通信社』記録係殿。こちらは東方調査団団長ディーン・ライム。三回目の母星に向けての通信。
今回の調査報告を行う。
こちらは以前リディア殿から報告のあった「対象ルナ」を追跡中。
今回も対象の名前、容姿の確認はできておりません。
前回の通信から逆算してみましたが、近くの星系にいることだけは……。
申し訳ありません。
以上、報告終わり!
……なんて言うと西方調査団団長殿にこってり絞られそうなので、少し小話を……。
リディア殿は知っているでしょうか。キャシラ星系の複雑さを。
キャシラ星系には恒星である太陽、その周りを12の衛星がまわっています。
その衛星の間には、必ず時空のゆがみが存在しています。
時空のゆがみ、いわゆるブラックホールのようなもの、ではないんです。
この星系における時空のゆがみは、ワープホールなんです。
……ええ。うちの星系だと一番外側の衛星にあるあれです。
あれはどこに飛ばされるかわからない運ゲーワープホールですけどね。
どこに飛ばされるかわからない、というのはキャシラ星系も同じなんですが、
行先はすべてキャシラ星系内のいずれかのワープホール。しかしまったく予想もつかないために時刻表を作って運営することもできないそうで。
それどころか、近くを通っただけで引き込まれる恐れがあるんですよ……!
……あ、はい。
恐れながらやらかしました……。船ごと引き寄せられて、知らない場所に放り出されて……。
気がついたら恒星に飲まれそうになってました……はは……修理代見るのが今から怖いです。
というわけで、追跡対象はどこかのお星さまの光の中に消え、我々は満身創痍。態勢を立て直すには二か月ほどかかりそうです……。
どうにか……どうにか、西方調査団団長殿と社長にこの事をやんわりと伝えていただけないだろうか……!
あなただけが頼りなんです! お願いします!
検討をお願いします!」
『この後社長にそのまま報告しました。 記録係 リディア・マルカス』
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