間章 ルーシャとルニード

 ポロ星系 第三惑星系 恒星から数えて四の星、ルーシャ。


 二つの衛星を持つこの星では、宇宙で未だここでしか発見されていない鉱石が存在する。



 現地の言葉で夜の月を表す「ルニード」。


 それがこの鉱石の名前。



 見た目はその名の通り、ルニードと同じ白銀に輝いている。


 硬度はダイヤモンドに少し劣る程度。

 劈開へきかい(鉱石が割れやすい方向)が四方向にあるため、市場に出回る際は八面体であることが多い。


 今まで見つかったものの中で一番大きいルニードは大人五人で手を繋いでぎりぎり一周できるほどの物だったらしい。


 この石にはそれぞれが共鳴する作用がある。

 それを電波、および音声に変換する機械をつけたものが「鉱石ラジオ」と呼ばれるポロ星系の特産品。

 電波を発するとランダムに、同じルニードを使った鉱石ラジオにつながる、ちょっと摩訶不思議なワクワクアイテム。

 あくまでも他星系の人にとっては、だが。



 同じ塊から劈開させたルニードは特に共鳴率が高い。これを「共石ともいし」と呼んでいる。

 共石をラジオに使用すると相互のチャンネルが確立され、双方向の通信が可能になる。

 

 このことを明らかにしたのが、稀代の採掘者「セネイア・ロンドヴィル・マルカス」。

 

 彼は六つの共石を使い、王宮に六つの鉱石ラジオを納めた。

 これは「マルカスの六つ子ラジオ」と呼ばれ、王族にのみ使用が許可された。精度の高いラジオは重宝され、数々の国家事業でも活躍したという。



 王家が反政府軍に打倒されるまでは、だ。

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