神さま

「あー、あー。

 聞こえてるかな。」





「あはは、そうか。ちゃんと作法を守らなければなあ。



 アーヴェー・アーヴィー。

 はじめまして、どこかのお嬢さん。




 

 わたしはね、ううん……説明が難しいなあ。



 ダニン彗星をご存じかな? そう、今も宇宙のどこかを彷徨っているあの子たち。

 あれはわたしと弟が仲たがいをして、取っ組み合いのけんかをしたときに殴り飛ばした星の一部なんだ。


 ははは、懐かしいなあ。もう五十六億年くらい前になるかな。


 あの頃は宇宙に進出している生命体も少なくてね。

 暴れたところで誰にも迷惑はかからなかったんだが……。今はいろいろと縄張り争いだったり、船が通ったりね。

 なんだか宇宙が小さくなってしまった心地だよ。



 むむ。これで通じているかわからんな。

 そのくらい大きな種族のなにかだと思ってくれたまえ。





 こんな話をしてもつまらないかなあ……。




 そうだ。たぶんお嬢さんも面白く聞ける話をしてあげよう。



 お嬢さんは別の星の人と良く話をするだろう?

 そのとき、言葉が通じなくて困ったことはないだろう?


 それはね、わたしがいじったからなんだ。



 ……なにをいじったかと言われると難しいんだが……うーん。



 そうさな。ここは『宇宙の法則』とでもしておこう。




 その昔、この宇宙では星ごとに……それどころか星の中で何十、何百という言語が飛び交っているところもあった。

 もちろん、その言語がわかる人でなければ会話は成立しないよ?


 わたしはそれで困ったことがあってねえ。

 愛する人に、そのことを伝えられなかったんだよ。

 そんなの、悲しいじゃないか。



 わたしは悲しくなった。

 だから、みんなが言葉の意味をわかるように法則をいじったのさ。



 厳密には言語の統一ではない。相手が何かをしゃべったとき、それが自分の言葉においてどんな意味を持つのかわかるように脳が理解するようにしたんだ。


 だから、今でも言語は宇宙に何億と存在しているし、お嬢さんも喋ろうと思えば別の言語を話すことができるだろう。



 

 ……なんでそんなややこしいことをしたのか気になるかい?



 それはね。

 その言語を話している時にしか感じることができない風というものが、この宇宙には存在しているからね。


 そのうちお嬢さんにもわかるようになるだろう。







 さて、そろそろお暇しようかの。



 はは。お嬢さん、ずいぶん眠そうだからのう。

 ああ、なんで会話もしていないのに自分の思っていることが伝わっているか不思議だろうが、わたしにとっては朝飯前だから気にしなくてもいいんだよ。


 宇宙には、君の知らないこともたくさんあるのさ。



 いろいろと厄介な運命に絡まれたお嬢さんには構っていられないだろうけれどもね。






 ……わたしにはすべてを知る力がある。

 だから、あえて困難に立ち向かう人に声をかけたりはしないんじゃが。





 まあ、がんばりなさいな。




 以上! じゃあまたな、お嬢さん。」

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