誰かの最期

第一の月 櫛の日




「……。






 …………。





 ……ああ、すまない。


 ちょっとへまをしてね。

 もうすぐ喋れなくなると思うから……。それまで、聞いていてくれないだろうか。



 もう、体を動かすのも億劫だよ。はは。

 これでも、昔はスポーツ選手だったんだよ。

 マラソンのね。

 あのときは、どこまでも走って行ける、気がしていたんだ。

 

 ろくに国境も越えられないのにね。

 



 

 ……戦争っていうのはなんでこう、終わらないのか。

 うちの国はもう五十年も、隣の国と争っているんだ。

 星どうしじゃない。まだ星の中で国が分裂していて……。



 ……。


 ああ。

 

 そういえば、聞いたことがある。


 旅地通信社。確か、ポロ星系の。


 

 星統王家が市民革命で、倒された星、だったね。


 ……君が関わったかはわからないけど。

 大変だったろう。

 行ったことはないけれど。戦いに巻きこまれる苦しさは、わかるよ。

 どこも同じようなもの、だろうから。



 ああ。




 あんなに美しい湖だったのに。




 ……面影もないな。











 でも、最後に見れてよかった。」












『………………………。


 おやすみなさい。』

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