間違って女子高に入学したのはいいが、周りが辞めさせてくれない件について

インドカレー味のドラえもん

入学初日

プロローグ 春の別れと、あるいは

 季節は春。

 世間一般では入学シーズンと謳われる四月の上旬だ。

 俺は温かい陽の光を感じながら、桜並木のヴェールをくぐり歩く。

 視線の先には、豪奢な校門がくぐるものを威圧するかのように居を構えているのが見えていた。

 ざわざわと木々の枝は擦れ、その度に散る桜を尻目に、俺はその門へと向かって行く。

 ひらりと肩に乗る桜を払いのけ、踏みつける花弁は音も無く土に埋もれてゆく。

 並木を抜け、わざとらしくざっと音を立てあゆみを止めた俺は、門の前に佇みながらゆっくりと振り返った。


 ―――校舎である。


 レンガ作りの、見事なまでに中世的な雰囲気を纏った校舎がそこには在った。


 見るものを威圧するその姿は、校舎というよりは教会じみたデザインで。茶と白を基調とした色合いも相まって訪れた者に神聖な印象を与えるだろう。


 門に背を向けたまま、ゆっくりと視線を校舎から空へと移す。


 高く見上げた視界の隅には、それでも複数の校舎や森、果ては本物の教会までもが納められていた。


「……ふぅ」


 と、溜息を付き、仰いだ視線を元に戻す。


 ―――春、である。


 桜も満開な四月の、入学式終わりの水曜日。誰もが期待と不安を胸に抱く、始まりの季節。


 ―――俺こと新1年E組7番 倉井くらい 未来 みらいは、晴れて学園を去る事となった。

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