雪!
朝、武士に叩き起こされた。
「大家殿! 大家殿!」
なになになに、なんすかなんすかなんすか。
さぶっ! 嫌っ! お布団から出たくない!
「積もっておる! 積もりに積もっておる!」
何が? 往年の恨み?
「そんな恐ろしいものが理由で起こされたくはなかろう! 違うのだ! あの白くて、ふわふわで、うきうきな……!」
子犬……?
「子犬でも起こしたかもしれんが! ええい、見るがいい!」
シャッとカーテンが開けられる。そこに広がっていたのは、すっかり雪に彩られ銀一色となった世界だった。
……うわぁ。
「合戦じゃー!!!!」
こうして私は、クソ寒い中武士によって外に引っ張り出されたのである。
そして、やるからには勝つのが私の信条だ。しっかり防寒具に身を包んだ私は、両手いっぱいの雪を玉にしていた。
「大家殿ーー! どぅぬらぁぁぁぁあ!!」
謎の雄叫びと共に武士が飛び込んでくる。しかし自分が有利と思う人間にこそ、隙が生まれるのだ。私は振り向きざまに、武士に雪の塊を投げつけた。
「ぐぬふぁっ!」
だけど、武士の落とした雪の欠片が私の服の隙間から背中に落ちてきた。ぎゃー!!
「ふふ……これぞ……肉を切らせて骨を断つ……!」
偶然だろ! ちょんまげ引き抜くぞ!
あとこれ合戦じゃねぇな! 一対一だから一騎打ちだな!
「雪一騎打ち……?」
雪一騎打ちじゃー! ここで会ったが百年目! 父の仇、討たせてもらうぞ!
「誰? 某知らん」
ノれよお前!!!! 私一人を取り残すな!!!!
久しぶりに雪を見たせいで、年甲斐もなくはしゃいだわけである。楽しかったです。
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