プール

 時間の流れが早すぎてびっくりする。「武士がいる」も毎日更新しよう! と思ったらもう一週間経ってんだもんな。びっくりする。

 それはさておき。

 実は、先日武士とプールに遊びに行っていました。


「流れる水浴み場があると聞いて」


 ああそれ川みたいなもんだよ。つーか殆ど川だよ。魚じゃなくて人が泳いでるだけのさ。

 そんな言葉を連ねて逃れようとしましたが、ダメでした。ふんどしで特攻しそうな勢いだったので、やむなく大学生の時に買った水着引っ張り出してきました。

 で、数年ぶりのプールです。そんなに大きい場所ではなく、室内温水プールが前提の時々流れるプールがあるみたいなとこ。夏休みなので子供が多いですが、常連らしきおばちゃんが多いのも印象的。

 武士には「飛び込みはしないこと」「走り回らないこと」「周りの利用者に配慮すること」「楽しくても叫ばないこと」を重々言って聞かせ、放ちました。


「のう大家殿、この板実によく浮くぞ」


 おう、早速ビート版を貸してもらったのか。


「見てみろ、腹の上にのっけてしがみつこうもんなら……」


 はい。


「らっこ」


 お前が幸せそうで何よりだよ。


「貝を割る仕草」


 やめろ水が散る!

 つーか武士って泳げるの? ちょっとビート版貸してごらん。


「ぶくぶくぶく」


 奇麗に筋肉ダルマが水中に沈んでいった……。


「ごぶがぶごぶ」


 ああもう落ち着け落ち着け! ここ子供用プールだから! 足つくから!


「これはしたり」


 頼むぜお前……。そんなんじゃ流れるプールも難しいんじゃないか。


「そのようなことは無い。某ならできる」


 何その根拠が無い自信……。


「大家殿の肩にしがみついていれば問題ない」


 いやだあ、ムキムキ背中に貼りつけて衆目に晒されるの。

 だけどどうしてもというので、ビート版から手を離さないよう言って流れるプールに連れて行きました。思い出って大事だしね。

 そして入水。この時点で武士は水の抵抗が楽しかったようで、はしゃいでいた。


「よし! ではこのびーばーにしっかと掴まり……」


 ビーバーに掴まるなよ、可哀想だろ。ビート版な。


「せーので……そごぼぼぼぼぼぼぼ」


 秒でひっくり返った!!


 結局、監視員さんに事情を話して特別に浮き輪を貸し出してもらうことになった。武士は嬉しそうにしていたが、ちょんまげ筋肉ダルマが付属した浮き輪の紐持って先導する私の目は死んだ魚のそれだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る