目が覚めると私は
ある朝、不安な夢から目覚めてみると、ベッドの中で自分の姿が一匹の巨大なテントウムシに変わってしまっているのに気がついた。
いやテントウムシて。
「まことカッケェではないかーーー!!!!」
そして我が家に居候をかます、精神年齢小学二年生の武士が食いついた。
「大家殿! 大家殿の布団にでかきテントウムシがおるぞ! 大家殿! 大家殿ー!」
私が見えないのか、すぐそばにいるのに。
いや、見えてはいるのか。紅(テントウムシ)に染まってるから気づかれないだけで。
「大家殿ーーーっ!!!!」
残念ながらテントウムシは喋らないので、武士はただ叫び続けるだけである。ここでお隣さんから壁ドンをくらい、奴は大人しくなった。
「ぬーん、怒られてしもうた。ところでお主、名はなんと申すのだ?」
何度も言うが、テントウムシは喋らない。武士は正座をしてワクワク待っていたが、物言わぬ私に残念そうな顔をした。
「まさか、名が無いのか……?」
そう受け取っちゃうんだな……。もしかして江戸時代的な感覚だと虫は喋って当然なのか? デ○ズニーみたいな世界観なのか?
「では某が名付けてやろう。紅饅頭」
そんでネーミングセンスをどこに落としてきたんだ、コイツは。
「よーし、紅饅頭! 早速某と都へ繰り出そうではないか!」
武士がドアを開けて私を誘うが、丸々としたテントウムシがそんな細長い穴から出られるはずもない。ベランダなら体を縦にすればいけるかもだけど。
「む、出られぬのか? ああ、腹が減ったのだな! 待っておれ、某が美味な葉っぱを取ってきてやるぞ!」
そう言うと、武士は全速力で走り去ってしまった。残された巨大テントウムシである私は、特にすることもないのでウトウトし始めていた。
それから、どれぐらい経ったか。
「大家殿!」
武士の声に、起こされた。
「何寝ておるのだ! 某の紅饅頭をどこへやった!」
え……紅白饅頭が何って? 知らん……。お前が食べたんじゃないの?
「ぬうううん! 紅饅頭ー!」
そう言いながら武士は、冷蔵庫を開けて饅頭を探していた。
……まあ、なんだ。
そういう変な夢を見たというだけの話である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます