理想のおうち
とうとう武士が、とてもよく泡立つボディタオルで背中をごしごししながら「乾布摩擦」とほざくようになりました。
おめでとう。これで君も立派な現代日本人だ。
つーか乾いてねぇし。
「うむ。今日も今日とて、だぶは良い香りだ」
そう、うちのボディソープは昔からダヴと決まっている。この世で一番好きな香りかもしれない。
ところで、うちのアパートには脱衣所が無い。風呂から上がれば速攻玄関とキッチンがお出迎えする極寒仕様である。つまり、今料理をする私の背後には全裸で体を拭いている武士がいます。学生の時から住み続けてるけど、流石にいい歳した男二人がシェアするには厳しいなぁ。
かといって、引っ越すのも面倒なのだが。奨学金とかも返さなきゃだし。
「ぬ、家移りの話か?」
うん。
「某たわまんがいい」
タワマン? おいふざけんなよ、アンマンとかニクマンみたいに言うな。
「最も空に近い家が良いのだ。そこにて、げに大きな犬を飼うてな。広き部屋で犬と走り回り、夜は五度寝返りを打ってもまだ余るほどの布団で寝るのだ。無論、タコ助や某のチビ達の部屋も構えるぞ」
微妙に現実感の無い構想だな……。でかけりゃいいのか、お前。
「そして、開ければどんな菓子でも出てくるエレキテルの箱があり……」
溢れた夢と欲がとどまる所を知らねぇ。
つーか私の部屋は?
「あ!!!!」
マジで忘れてた顔してやがんな、コイツ。家主私な。お前居候。
「乾布摩擦!!」
ごまかせてねぇごまかせてねぇ。早く服を着なさい。
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