テレビ壊れた

 なんか、突然テレビが壊れた。


「ぬ、ぬ」


 それを不服とした武士が、テレビを掴んでガシガシと動かしている。やめなさいやめなさい。もっと壊れたらどうすんのソレ。


「ぬーっ!?」


 そして武士は足を滑らせ床に頭部を強打した。ぶつけた部分を手で押さえ、涙目でテレビを睨みつける。いや、お前の転倒にテレビ何一つ関係ないからな。


「一刻も早く助けたい!」


 直したいってことだろうか。でもそうだね、テレビが映らないのはちょっと不便だ。

 じゃ、修理を頼むとしよう。


「うむ!」


 ……えー、はい。そうです。突然テレビが映らなくなって……はい……。え、保証期間? あー、切れてます。はい。……ええ、懸賞で当てたやつですから購入店とかも分かんないです、はい。


「ぬー」


 はい、分かりました。じゃ、明日の午前十時で。お願いします。


「どうであった!」


 うん、修理業者さん明日の朝に来てくれるみたいだから、お前対応しといてくれる?


「承知仕った!」


 分からないことあったら電話していいから。


「うむ!」


 マジでちゃんと連絡しろよ。


「うぬ!」


 特に金が発生する気配があった時は……。


「少しは信じるがいい!」






 そんで翌日。武士は無事対応できたかとビビりながら帰ったら……。


「ぬふー」


 ドヤ顔の武士が、こちらを見ながらテレビをペタペタと叩いていた。何、直ったの?


「直らんということが分かった」


 TRPGで技能ダイスは成功したけど特に進展が無かった時みたいに言いやがる。


「直すとなれば、新しいテレビを買う方が早く安いそうだ」


 あー、じゃあ買いに行く? 今度の土日あたり。


「む。ではこのてれびはどうなるのだ」


 まあ廃品回収か、下取りだな。


「ぬ!? つ、つまり捨てるというのとか!? ならぬならぬ! 大家殿は良きものを直しながら長く使っていくべきと思わんのか!」


 時代は変わって大量消費社会よ。お心がけは立派だけど、直す方が金かかるならよっぽどの思い入れが無いと無理だわ。


「! こ、これは某がここへ来た時からの友であり……!」


 浮いた金でカントリーマアム買ってやるから。


「さらばだ、てれび!」


 安い友だったな……。

 まあ部品によっては再利用されるみたいだし、またこのテレビが生まれ変わってくるのを待とうよ。


「うむ!」


 うんうん。

 ……ああ、明日からテレビを選別する作業が始まるのか……。


「楽しみだ!」


 面倒くさいなぁ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る