ただの農民ですが最強魔法使いなので杖代わりのクワで無双します・前編

 エイプリルフール――それは、「嘘をつく」という大義名分の元、各クリエイター達が己のクリエイティブを遺憾無く発揮する日。

 だと私は最近認識してます。いやはや、みんなお祭り好きだよなぁ。


 私? 私も好きだよ。


「大家殿!! 冒険の準備は整ったか!!」


 そういうわけで、「武士がいる」定期狂気案件です。今回は目の前に鎧を着た武士がいますね。そんでここ、多分ギルド的などこかですね。

 あれですね。これRPGパロ的なやつだな。


「大家殿ぉ! 武器や防具は持っているだけではいかんぞ! きちんと装備せんとな!」


 ウキウキしてんなー、武士。RPGにおいて日本刀は結構終盤に出てくる強武器なイメージあんだけどな。それを装備してるってことは、この武士結構強いんだろうか。

 あとね、どうもステータス見る限り私は魔法使い的なジョブっぽいんだけど、どう見ても着てる服が農民のそれなんだわ。杖の代わりにクワ持ってんだわ。

 え、マジで? これ私の現状最強装備? それか「ただの農民ですが最強魔法使いなので杖代わりのクワで無双します」的なやつか。チートってやつか。やめろよ、その方面のセンス皆無なんだから。


「うむ、準備ができたようだな! どこからどう見ても立派な魔法使いであるぞ!」


 うわ、マジで魔法使い装備っぽいよ。いいのかな。スライムに飛びつかれるだけで死にそうだぜ。

 まあ、武士を盾にすりゃいいか。

 こうして、私達はギルドを後にした。






「実はブラッディブラックドラゴンが街の外れで悪さを働いておるらしくてな。某らはそれを退治せねばならぬ」


 ほう、ブラッディブラックドラゴン。


「む、スライムが出たぞ! 大家殿、援護を頼む!!」


 ほいほい。


「ぬわりゃっ!!」


 武士が跳躍し、スライムに日本刀を叩き込む。哀れ、スライムはあっさり真っ二つになって消滅した。

 おお、なかなか強いじゃん、武士。いいね。


「危ない、大家殿! 敵が来ておるぞ!!」


 武士の言葉に振り返れば、スライムが二匹私に飛びかかってきていた。咄嗟にクワを構え、「ファイア!」とそれっぽい呪文を唱えてみる。


 クワの先が爆発した。


「うわーっ!!」


 爆発をまともに受けたスライムは、その身を四散させた。我々の顔や体に、スライムの破片がびちゃびちゃと飛んでくる。

 グロい。あと汚ねぇ。


「……大家殿……」


 そんで武士が、ものすごい目でこちらを見てくる。違う、私のせいじゃない。クワのせいだろ、これ。

 ……まあ、持ち主の私も悪いな。いや心配すんな。こんなこともあろうかと予備の杖を持ってきてんだ。すぐに装備を替えて……。


 ✳︎だが、このそうびはのろわれている!


 ……。


 ✳︎そうびをはずすことはできない!


 ……。


「……」


 ……。


 え、続くの? これ。

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