抜歯後二日目
そういや、私が子供の頃は熱が出ると何故かほっぺが腫れたものである。そのたびに親に「おたふく風邪!?」と驚かれたものだったが。
「だっはっはっはっはっはっはっはっ!!」
ところで、無神経な武士を茹でる釜って百均にも売ってたっけな?
腫れまくった私の右頬を指差し、笑い転げる武士を憎しみに満ちた目で睨む。しかしその顔がまた面白いようで、武士は腹を抱えてヒーヒー言っていた。
二日目三日目が一番腫れるってあれほど言っただろ! いい加減にしろ!
「大家殿がひょうたんになる日が来るとは思わなかった」
私も思わなかったよ……。
あああー、痛い。なんか昨日より痛い気がする。やっぱ治りかけがきついよな、怪我って。
もだもだしながら布団に横たわっていると、腕を組んだ武士が神妙な顔をして言った。
「仕方ない。こうなれば某が一肌脱ごうではないか」
おや、何か妙案がおありで。
「うむ、まずはぐつぐつと釜に湯を沸かしてだな……」
何? お前入るの?
「いや、その周りで踊る」
あー、祈祷? なんか今回は手がこんでるねー。
あ、いかん、もうだめだわ。痛い。喋るのがもう辛い。あー、なんか傷が開いた気がする。血の味がする。あー。
「ふむ、重篤であるな」
うるせぇ、優しくして。
「むむむ、ならば大家殿の体に負担がかからぬよう、身振り手振りで会話しようではないか!」
そう言うと、奴はすりすりと自分の腹をさすり始める。そして次に、手に乗せた何かにさっさっと何かをよそう仕草を始めた。
そのまま、エアーご飯をもぐもぐと食べる。
……えーと、お腹空いたの?
「正解!」
正解、じゃねぇんだよ!
いやお前は普通に喋りゃいいんだよ! 私! 私が喋るの辛いっつってんの!!
あああああつっこんだら傷が痛ぇーー!!
「安静第一だぞ、大家殿!」
一週間ほどお外に遊びに行っててぇー!
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