回転寿司

 よぉ武士。


 今日は回転寿司に連れてってやる。


「なぬ……開店……?」


 開店寿司は、それもう普通に営業中の寿司屋だな。

 回転。回るの。寿司が。


「なにゆえ?」


 何故ってそりゃお前……。

 なんでだろ。効率? いや案外楽しいからかな。

 考えてもみろよ、お前寿司好きだろ?


「うむ」


 それが回ってるんだ。テンション上がらねぇ?


「実に愉快だ」


 だろ。


 行こうぜ。


「うむ!」


 そういうわけで、行くことになった。






 店内はそこそこ混んでいたが、予約をしていたのでスイスイ案内してもらえた。武士は毎度の通り、キョロキョロと辺りを見回してはウンウン言っている。

 カウンター席に座り、腹が減っていたので回ってきた皿を適当に取る。しかし、武士は戸惑うばかりで手を伸ばさない。


 何? どうしたのよ。


「……回っておらん……」


 うん?


「これでは、回転皿ではないか……」


 ……。


 ……あー。


 なんとなく、言いたいことが分かったわ。

 お前あれか、寿司自体がくるくる回ると思ってたのか。

 ンなわけねぇだろ。ネタ吹っ飛ぶわ。


 皿の上に乗った寿司がレールの上で回ってるから、回転寿司。そういうもんだ。それでいいんだよ。


「ぬ、プリン」


 聞けや。


 私の言葉を無視し、武士はプリンのカップを取る。


 皿だけ残して。


「ぬうううう! 皿も取らねばならんとは、先に言ってもらわんと分からんぞ!」


 腕を伸ばしてさらわれて行く皿をキャッチした後、軽く説教すると武士にそう言い返された。

 まあ確かにそこは私が悪かった。ごめんな。


「しかし、こうなってくるといよいよもって皿が主人公であるな。皿が回り、皿を取り、皿を数える……」


 一応、メインは寿司なんだけどな……。


 けれど、食べ終わった光景だけでいえば、完全に皿コレクターである。案外武士の言うことも的を得ているのかもしれない。


「マグロが旨いぞ、大家殿!」


 お、それは私が取っていた皿だな?

 戦争を始めたいのかな?


 そこで武士にモニターリモコン操作の使い方を教えてやると、嬉々として使い始めた。


「皿が周り、寿司は無尽蔵に吐き出される。挙句板前殿もこのように薄くなるとは、まことに異なことよの!」


 そいつが作るんじゃねぇんだわ、寿司。


 しかし勘違いさせておくのも面白いので、黙っておく。寿司食ってる最中、武士がずっとモニターに向かってお礼を言っていたのが、大変愉快だった。

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