ポケモン
「ぽけもんをやりたい」
――ついにこの日が来てしまったか。
いや、絶対に気になるだろうとは思っていたのだ。ピカチュウやイーブイはどう考えても可愛いし、最初に選べる三匹の愛らしさといったら、何故全員連れて行けない? と本気で疑問を抱くほどだ。
だが、うちに最新版のポケモンは無い。
買う余裕も、あんまり無い。
「ぬうううううううう!」
そう伝えると転がって悔しがった。
聞くと、近所の子供にポケモンなるものを教えてもらったらしい。
「すかい殿もびおら殿も持っておるのだ! 某も欲しい!」
かっけぇ名前だな、お前の友達。
つーか言い分が完全に小学生のそれである。お前成人してんだよな?
が、無いものは無い。
出せないものは出せない。
え? サンタさん?
バーカ、うちに来るサンタさんにも懐事情ってのがあんだよ。
というわけで、昔のゲーム機を引っ張り出してきた。
「これは……?」
旧金銀版。1999年発売。
大丈夫、まだ遊べる。
「ぬぅ……? すかい殿のものとは形が違うな……?」
古いからな。
でも古いからって悪いってことは無いだろ。
これで遊びなさい。
「ぬう、絵が違うぞ! 枠も狭いぞ! 押す場所も少ないぞ!」
文句だけはいっちょ前だな。
いいからやれって。
面白いから。
「ぬう……」
渋々武士はやり始めた。最初のポケモンは何を選ぶんだろう。
「……ちこりいた!」
ほう、草ポケモンか。
「わにのこ……!」
お、水にするかな?
「ぬうううひのあらし!!」
どれにするんだよ。
「決められん……」
だよな。
いやお前ならそういってくれると思ったよ。
「全員は連れてゆけぬのか」
ゆけぬのだ。
一匹に決めるがよい。
「……残った子はどうなるのだ?」
あー……一匹は泥棒に取られて、一匹はそこにずっといるかな。
「尚更選べんだろう!!」
そんなこと言われてもなー。
というわけで、未だに武士はどのポケモンを連れて行くかで悩んでいる。
そろそろ、ピカチュウ版(1998年発売)にすり替えてやった方がいいのかもしれない。あれなら最初からピカチュウに決まってるし、連れて歩けるし。マジで。
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