スーパーが苦手だ

「大家殿は、買い物が下手か?」


 ……おおぅ。


 武士に痛いところを突かれ、グラリとした。

 仰る通り。大正解。

 私は、買い物が苦手だ。


 というか、物を探すのがとにかく不得手なのである。


 そう白状すると、スーパーがお散歩コースに組み込まれている武士は呆れ顔で私を見た。


「なんと情けない。どこの店にも、天井から親切な案内板が下げられているではないか」


 うん、そうなんだよ。

 そりゃそうなんだけどね。


 でもさ、武士。

 "食べるラー油"って言われたらお前、どこ探す?


 私は断然"油コーナー"で探すね。

 見つからないよね。

 何故かふりかけと一緒に鎮座してるよね。

 何なの?


「"たべるらぁゆ"とはなんだ?」


 今はそれどうでもいいんだよ。

 ……うん、わかった。買おう。買って帰ろう。チャーハンとかに入れても旨いし、あれ。買おう。


 話を戻そう。

 "もち"って言われたらお前、どこ探す?


 私は断然"米コーナー"で探すね。

 見つからないよね。

 季節ものでよく出るからって、店の入り口に山積みされてるよね。

 何なの?


「お汁粉が食べたい」


 今はそれどうでもいいんだよ。

 ……うん、わかった。買おう。買って帰ろう。あれちょっとチンしてチョコを包んで食ったら、中でチョコ溶けてすんげぇ旨いんだ。買おう。


 そんなわけで、私はスーパーが苦手である。

 全然意思疎通ができない。


 その点、不思議と武士はあっという間に見つけてくれるので、買い物に行った時には重宝する。いや、そもそもコイツスーパーに日参してるからか。


 何事も、慣れと経験である。

 私ほどの人間になれば、武士を通してそんな教訓も得ることができるのだ。

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