ハロウィンだったらしい
昨日、ハロウィンだったらしいじゃないですか。
年がら年中スーツで、季節感のあるイベントといえばクールビズぐらい。そんな独身サラリーマンである自分には、ハロウィンなんて基本的に縁の無いイベントである。
そのはずだったのだが。
昨夜家に帰ると、全身汗だくでカボチャをくり抜く武士がいた。
「おお、大家殿。えー……と、と、と……」
私の帰宅に気づいた武士が何かを言おうとしている。
あれか。トリックオアトリートとやらか。
私は鞄をその場に置き、じっとヤツの言葉の先を待った。
そして、武士はやっと答えに辿り着く。
「……冬至……?」
惜しい。
カボチャにまつわるエトセトラではあるけれど。
「今日は地獄の窯の蓋が開く日らしいな。それに伴い、魑魅魍魎がわんさと湧いて出てくると聞いた」
あ、お前には若者のどんちゃん騒ぎが百鬼夜行みたく見えてんのね。認識としては間違いではないが、根本的に色々違うと思う。
……ところで、そのカボチャは何よ。
「お隣の秋澤さんからお裾分けだ」
なんということだ。後でお礼を言いに行かねば。
しかし、聞かなければならないことはまだある。
武士よ。
貴様の後ろに見える大量の菓子はなんだ?
「……」
……。
「……“はろいん”の時しか、これら愛い模様の菓子は手に入らぬらしくてな……」
……まあ、分かるよ。
ハロウィン限定のパッケージって、可愛いの多いよね。
期間限定の味なんかもあって、ソワソワしてしまう気持ちは自分もある。
だが、許さん。
こうして武士の買ってきた大量の菓子の半分は、私と同僚のオヤツ、及びお隣の秋澤さんへのお返しになったのだった。 (カボチャは適当にクッキーにした。武士喜んでた。)
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