寝坊
寝坊をした。
顔を洗い、うがいをし、眼鏡を引っ掴む。時計を見ると、いつも家を出る時刻は五分前に過ぎてしまっていた。
半ば八つ当たりに近い感情で、武士に何故起こしてくれなかったのか尋ねようとする。
が、ヤツの姿を見てそんな疑問は吹っ飛んだ。
「……すまぬ。大家殿は今日、休みではなかったのか……」
刀の代わりに虫かごと網を携えた武士は、ドアの前でしょんぼりとうなだれていた。
……昨夜、赤トンボのいる公園特集をテレビで見たって言ってたもんな。私も行きたいなら連れて行ってやるとか言ったもんな。その流れでコレならそうなるよな。なんかごめん。
――が、残念ながら今日はトンボの日ではない。燃えるゴミの日なのだ。
すまんが武士、捨てといてくれ!
「大家殿おおおおお!!」
ゲ、缶の日も今日じゃん! 頼むぞ武士!
「約束が違うではないかーーーーっ!!」
日曜な、日曜!
あれ、日曜は動物園だっけ? いいやもう知らん。とにかくどこかに連れてきゃいいんだろ。ごめんごめん!
あばよ!
騒ぐ武士を放置し、私は靴を履き履き外に飛び出したのだった。
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