2日目 武士の朝は早い

 午前五時、武士の野太い声で目が覚めた。


 自分の置かれている状況に、混乱しているのだろうか。

 うるさかったのでおにぎりを与えてみたら、三個食べて静かになった。

 どうやら腹が減っていただけだったようだ。


 しばらくするともよおしたのか、「厠はどこだ」と尋ねられた。


 トイレに案内すると、中から「足場が狭い」と文句を言う声が聞こえた。


 便座は足場ではない。


 今後に差し障るので流し方だけは教えてやると、吸い込まれていく自分のものを見つめながら一言「見事」と呟いていた。


 TOTOも仕事冥利に尽きると思う。




 無害そうだったので、おにぎりをもう五個こしらえ、放置して仕事に出かけた。




 帰ってきたら、武士はタオルケットにくるまって昨日と同じ場所で寝ていた。


 その頭には、枕もしっかり敷かれてある。


 武士は、枕とタオルケットの在り処を完全に覚えたようだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る