鬱病編 受験生の私

三年生に上がると同時に、学校に行けるようになった。始業式こそ休んだものの、翌日からは学校に行ったし、一人で教室に入ることもできた。新学年になってクラスが一新したこともあり、三学期に行った時のような居心地の悪さがなかった。

ーーあ、大丈夫そう。

部活は辞めた。練習メニューがわからなくてろくに練習に参加できなかったり、ずっと休んでいたことで体力が落ちていたりしたからだ。学校に行くようになって、部活も辞めて、心はスッと軽くなった。戻れたんだ、あの頃の私に。学校に行って、勉強して遊んで、友達と一緒に帰って長話しして。手首の傷はうっすらと跡を残しているけれど、そんなに目立たなかった。大丈夫だ。私はもう、大丈夫だ。それからは、優等生の仮面をかぶることもやめた。小学校から仲の良かった二人と同じクラスになって、三人でつるむことが多くなった。授業をサボったり、無断早退をして教師に怒られたり。怒られることは相変わらず苦手だったが、前ほど深刻に考えることもなくなっていた。恋だってしたし、彼氏もできた。まるで二年生の私が嘘のように、一日一日を楽しんでいる自分がいた。


不登校の間に、私の偏差値は58から50にまで落ちた。かといって行ける高校が少し限られただけだ。不登校というブランクがあることへの不安から、高校は定時制に進もうかと考えていた。理由はもう一つあって、私は当時漫画家を目指していた。それなら、午前の定時制高校に通って、午後にバイトをして空いた時間に漫画を描くことができると思った。けれど漫画の世界への憧れから、普通の高校に通いたいという思いもあった。進歩を決めたのは、悩みに悩んで十月頃だった。結局、家から一番近い普通科の高校に決めた。私達の代で入試制度が変わり、学力試験が必須になったからか、私立を受ける子が多かった。それが原因で大抵の公立高校は定員割れし、私の志望した高校も定員割れだった。おかげで大して勉強もせずに受かることができた。家の事情で私立の併願を受けられなかった私は、公立に受かるしか道はなかった。

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