「凍てつく風よどうかどうか止んで⑦」


GM:翌日。開戦2日前


GM:「いらっしゃいませ、おや。以前もいらしてくださいましたね。」


トリア:「これを。これで見せていただけますよね。」


GM:「此度のご用件は何でしょう?」


GM:「い、イサラ・モルト氏のサイン……。少々お待ちを。」


GM:君たちは結構待たされた。


トリア:「お母さんの直筆です。」


GM:「い、イサラ・モルトが、英雄が生きているですって!?」

GM:「だってこれ、つい先日の筆跡とインクじゃない!!」って奥のほうから聞こえますね


ジャック:「あ〜……。まぁそうなるよなぁ」苦笑いしつつ


トリア:「……。」ふふん。って顔


GM:「そんな馬鹿な!!だってあの時船と一緒に…もしかして、また討伐にきてくれたのだろうか??」


GM:「まぁいい、筆跡は本物だ、対応して差し上げてくれ。」


GM:「大変長らくお待たせしました。」


トリア:「大丈夫ですよ。」


GM:「筆跡鑑定の結果、ま、誠に信じがたいですがご本人様のものと確認が取れました。どうぞ、こちらがイサラ様の資料です。」


トリア:「ふふん♪」


GM:

・名:"無双薬師"イサラ・モルト(旧姓ヘルライズ)

・齢:28歳(最終記録)

・現在:生死、行方共に不明・出身:フェイダン地方

・拠点:ザルツ地方ロシレッタ~自由都市連盟

・職業:戦士、薬師、錬体士

・家族:夫、娘、養子

・以下経歴

フェイダン地方アイヤール生まれ。

蛮族領ディルフラムを相手に冒険者稼業を開始。戦争の収束の後に突如北上を開始。

シェナクェラス地方、蛮族領カルゾラル平原、リーゼン地方を縦断しそのままザルツへ渡航。

自由都市連盟イルマーにて現夫であるグリード・モルトと邂逅、そして電撃結婚。

そのままザルツを縦断し、ダーレスブルグに到着すると、そこで冒険者稼業を再開する。

流れの冒険者として各地を転々としつつ、ロシレッタにて第一子を懐妊。

臨月を迎えると同時に冒険者稼業の休止を宣言。第一子トリア出産と同時に養子を取る。

ロシレッタの要請に応じ突如出現した海竜の討伐を了承する。

ロシレッタ近海にて海竜を討伐するも亡骸に巻き込まれ乗っていた船が大破撃沈。

以降行方不明。


トリア:「…お父さん。それで隠してたのかな。」


アンナ:「大声で言いたいことではないでしょうね…。」


トリア:「よし。ありがと。見せてくれて。」


GM:「いいえ、生存の報告があってなによりです。お顔を見せられないのは、事情あってのことでしょう。深くは問いませんのでご安心を。」


トリア:「ん。助かる。」


アンナ:「じゃあ、私は少しだけ、羽目を外してきます。ジャックさんも行きますか?」


ジャック:「同行しよう。」


GM:本日の夜会話は珍しくジャック×アンナです。

酒場にて、パーティの父と母を担う二人はカウンターに並び座り、グラスを傾けている。


アンナ:「みなさん、忘れているかもしれませんが、私、前回の戦いで、皆さんを守れませんでした。」


ジャック:「あの時のことか……。あれは仕方なかったと言っても……。アンナは納得しないだろうな。」


アンナ:「これじゃ、ダメなんですね。もっと、もっと強く…。手の届く範囲すら守れないなんて。」


ジャック:「あの戦闘は始まった時点で終わっていた、俺は撤退の指示をもっと頑なにするべきだったともいえる。」


アンナ:「人々の避難を最優先したのは、きっと間違っていません。それでも、私は、街の人々と皆さんを天秤にかけて、多くの人々を取ってしまった。」


ジャック:「それでいいんだアンナ。時にそういう選択も必要だったし、前回はまさにその場面だっただろう。」


アンナ:「そういう、ものですか…。」


ジャック:「そういうものだ、盾というものは全ての攻撃を受け止めるものではない……。そうだろう?」


アンナ:「…ヒトを守ることなんて、私には烏滸がましい。でも、誰かを守りたい。そう思い続けて、ここまで来ました。実際に私は、今まで何を守れたんでしょうか。」


ジャック:「多くの者を守ってきたさ、目には見えない多くの者をな?」


アンナ:「その代償に、何を奪ってきたかも、数えられないほど多くあります…。」


ジャック:「人は奪い、奪われるものさ、俺たちに守りたいものがあるように、相手にも守りたかったものがあった、それだけさ。」


アンナ:「そう、れすか…そうだと、いいな…。」


ジャック:「あぁ……。そうだとも、アンナ、いつも俺たちを、色々なものを守ってくれてありがとうな。」そっと頭を撫でてやる


アンナ:「…。明日には、戻りますから。たまには…。」


ジャック:「あぁ……。それでいい。今日は好きなだけ羽目を外すといい。」


アンナ:「さぁ!飲みますよぉーーー!!何してるんですかジャックさん。そんなに弱くないでしょう。ほらほら。」



ジャック:「さぁ、トコトン付き合ってやろう」酒ぐいー


アンナ:「頼もしいです。」ぐびーーーーー


GM:小一時間後


アンナ:「Zzzz…」


ジャック:「さて……。部屋に戻るくらいは持つさ……。」姫抱きで部屋へGO


ジャック:「ん?」


アンナ:「人族とは、守る価値があるのか。」


ジャック:「……。守る価値か……。それは俺が決める問題ではないな……。そうだろう?」一瞬の思考の後、状況を判断し回答


アンナ:「2本しかない腕で、なぜこの身は、その腕以上を守るのか。」


ジャック:「人を護るのに重要なのは腕の数でも大きさでもないのさ。」


アンナ:「この身は脆い。ゆめ忘れるでない。人族。」


ジャック:「あぁ……。わかっているさ……。どこぞ神様……。」


アンナ:「Zzz…」


ジャック:「さて、風邪をひかせる前に帰らないとな」身体を上下させることなく高速でダッシュ


GM:翌日。開戦前日


アンナ:「ふぁ、おはようございます。もしかしてジャックさん、運んでくれました?」


ジャック:「おはようアンナ?よく眠れたかな?」


アンナ:「ええ、それはもう。とはいえ、ドレスモードにしてましたけど、重かったでしょう。見た目だけですからね変わるの。」


ジャック:「エスコートは紳士の嗜みだからな。」


アンナ:「不思議な夢を見ました。毛皮に包まれて、温かい夢でした。でも、急に地面が消えて、真っ逆さまに落ちて…。」


ジャック:「怖かったか?」


アンナ:「そこで目が覚めました。悪夢には違いないと思うんですけど、不思議と妙な悪寒とかもなくて。」


ジャック:「もしまたそんな悪夢みたら夢の中だろう掛けつけてやろう、ちゃんと引き上げてやるからな。」


アンナ:「ええ、期待しています。筋力鍛えないといけませんね!」


ジャック:「女性を重いと思ったことはないさ。これでも日々鍛えているからな。」


GM:本日の夜、グリードとの時間が迫っている。宿で最終作戦会議の予定だ。それまで何をして過ごす?


アンナ:「シーリスさん、買い出しまだですよね。行きましょう。」


シーリス:「おはよう……買い物行ってくるわ……。」


トリア:「港の方に行ってくるわ。」


シーリス:「あ、アンナも行くなら一緒に行きましょう。」


アンナ:「はい、夜には帰ってくださいね。」


ミーア:「ふぁーあ!よくねた!!」


ミーア:「今日は、じゃっく(馬)とあそんどこ!それにしてもなんか、りんご?の夢を見た気がする…?ヘンなの!まぁいっか!」


ジャック:「港には俺も行こう……。構わないかな?」


シーリス:「あ、ミーアお………いってらっしゃい。」


トリア:「ん。大丈夫よ。行きましょう。」


ミーア:「うん!いってくる!」たたたー


シーリス:「…スーーーッ。」頭抱え


ジャック:「さていよいよだな……。トリア。」歩きつつ


トリア:「ん。そうね。」


ジャック:「頭の中は大分すっきりしたようで何よりだ。」


トリア:「あー。ごめんなさい。」


ジャック:「いいんだ、時にはそういうことも必要だろう。」


トリア:「…ん。これで人のことを言えなくなったかな。」


ジャック:「まあそうだなぁ……。ほぼ全ての事項を踏み抜いていく様はなかなか痛快だったよ。」


トリア:「…まぁね。でも、きちんと情報は手に入れたし!大丈夫だよね!自分のことで手一杯だっただけだから!」


ジャック:「反省はまた今度にするとして、そういう過信はよくないぞトリア?」


トリア:「…わかってるって。反省会は逃げるけど。」


ミーア:「じゃっくー、たまにはお毛々ととのえよー!」


じゃっく(うま):ぶるるる…プイッ


ミーア:「えーーなんで~!」


ジャック:「俺は見逃したとしても……。他がなぁ……。」


トリア:「…だよね。」


ジャック:「終わったら甘い物でも馳走するさ。」


トリア:「ん。じゃあ2回奢ってもらうことになるのかな?」


ジャック:「そういうことだな。」


トリア:「そっか。」


GM:港では、釣り師の老人が1人で木材を拾い集め、イカダを作っていた


釣り人:「お前さんらか。どうかしたか?」


トリア:「あら?」


釣り人:「あぁ、これか、一応漁師じゃからな。いつでも海に出られるようにしておかないと。」


トリア:「ん。どこかの船造りの場所から音が聞こえないかなーって…。」


釣り人:「やつはもう自分の工房を持っとる。どこに作ったかは知らんがな。」


トリア:「そっかぁ。…今からだと探すのは難しそうかな。うぅん…。」


釣り人:「グリードと会ったんじゃろ。酒場のマスターにきいたよ。」


トリア:「うん。会ってきたよ。話してきた。」


釣り人:「幻滅したか?」


トリア:「んーん。親子喧嘩なんてしたことなかったから楽しかった。」


釣り人:「ほお、そういうもんか。」


トリア:「まぁその時は怒ったりとかしてたけどね。」


釣り人:「そんだけ元気になったなら、よかったわい。」


トリア:「ありがと。」


ジャック:「ご老体、ギルドから通達が来るとは思うが明日はなるべく高台の方へ避難しておいてほしい。」


釣り人:「もう来とる。明日、海に出るんじゃろ。」


ジャック:「あぁ……。ちょっと借りを返しにね。」


トリア:「んー。お父さんが工房作りそうな場所かぁ…うーん…」郊外のほうかなぁ。とか思ってる。


釣り人:「わしらには何もできん。じゃが、せめて、ガメル様に祈っておくぞ。」


トリア:「うん。久々の海。楽しみだな。」


釣り人:「はは、あれを前にして、楽しみとは。さすが、イサラ・モルトの娘よ。」


トリア:「んー?そう?」


釣り人:「さてと、イカダはこんなもんじゃな。わしは帰る。お前さんらも用心しておけよ。」


トリア:「うん。」


アンナ:「シーリスさん、何を買うんですか?」


シーリス:「スローワーベルトとポーションボールね。あとは魔晶石を補充かしら…」


シーリス:「アンナは?店が別なら後で合流しましょう」


アンナ:「実は私、用意は済んでいるというか、使えるモノがそこまでないといいますか。用意は終わってるので、同行します。」


シーリス:「そう、わかったわ」


アンナ:「わー見てください。あのリボン可愛くないですか?ミーアは嫌がりそうですけど。」


シーリス:「……そうね。ええ……こっちのお菓子の方が喜びそうね……はあ。」


アンナ:「…?どうしました?」


シーリス:「いえ、別に今何か起こってるわけじゃないのよ。ええ、今は…。」


アンナ:「いまいち要領を得ませんね。喧嘩でもしたんですか?」


シーリス:「え?いや、別に喧嘩とかしてないわよ?」


アンナ:「心配しなくてもミーアはシーリスさんのこと嫌ってませんよ。」


シーリス:「……。」


アンナ:「あの子もシーリスさんがいないと自分の戦法が成り立たないのはわかっていますし。」


シーリス:「いや、あの、えっと、いや何で知ってるのアンナ…!!いや、えっ…。」


アンナ:「水嫌いでお風呂で大騒ぎしてますけど、ちゃんとミーアが出てきた後は気持ちよさそうに風浴びてますよ。あの子は根に持つ人じゃありません。むしろ根に持っているのはシーリスさんです。」


シーリス:「……一応、ミーアがそんなので嫌いになるような子じゃないっていうのはわかってるわよ…わ、私だって持ちたくて持ってるわけじゃないわよ。」


じゃっく(うま):そのとき、じゃっくが通りをかきわけて、(単騎で)駆けてくる。口には騎獣契約証。


アンナ:「噂をすればなんとやら、ですね。」


じゃっく(うま):アンナを見つけると、駆け寄ってきて、勝手に彫像化する。


アンナ:「あら…?」



シーリス:「……その、嫌われてるかもって思ったら、何故かどう接していいかわから……。」


アンナ:「じゃっくさんだけですね。」


シーリス:「……あら?」


ミーア:「あ~~ん!どこいったの~~?じゃっくーー!!」どたどたかけてきます


アンナ:「あぁ、主も来ましたね。」


ミーア:「あれっ、シーリスー、アンナー、じゃっく(馬)見なかった~?」


シーリス:「あ、えっと、ミミミミーア、こっちきたわよ、じゃっく。」


アンナ:「ミーア、じゃっくさんは私の懐にいますよ。」


ミーア:「なんかねー、お毛々整えてたら急に走り出しちゃって……そうなの!?よかったーー。」


アンナ:「シーリスさんが言いたいことがあるそうなので、じゃっくさんの手入れしておきますね。」


ミーア:「うん??」


シーリス:「えっ、いや、えっまっ……」


アンナ:「私はこれで。がんばってくださいね、末っ子のシーリスさん。ふふっ」すたすた


ミーア:「アンナお願いねー!」


アンナ:「はーい。」


ミーア:「えっと、なあにシーリス??」ぐるん


シーリス:「えっと、その、あ、そ、そうだこれあげるわミーア。」りんご


ミーア:「え!いいの!?………コレ、食べても大丈夫なやつ??」おそるおそる


シーリス:「……やっぱりこっちのチョコあげるわミーア……。」


ミーア:「???」ミーアは こんわく している!!


ミーア:「なんか今日のシーリス、ヘンだよ!どうしたの??」


シーリス:「いや、その、ごめんなさい。困らせてしまってるわね…ええと…。」

あの、ミーアって私のこと苦手…だったりする?」


ミーア:「えっ?うーーーーん……たまーに怖い笑いのときがあるかなぁ…。」


GM:風呂に入れてお節介を焼きミーアに避けられるシーリス、下手なブラッシングに嫌がり逃げるじゃっく。


ミーア:「だから、ヒドラは、ヤ!あと、ヘンな樹も、ヤ!でも、それくらい??」


シーリス:「……そう、そう…よね…。」


ミーア:「うん!だから、シーリスのことは好きだよ!」


シーリス:「えっ、あ、その、私もミーアのことは好きよ。」


ミーア:「うん!知ってるよ!!ありがとう!!」満面の笑み


シーリス:「えっと…ごめんなさいね、最近。ありがとうミーア。」


ミーア:「???うん?…うん!よく分かんないけど、分かった!じゃあ、もどろ??」笑顔で手を差し伸べる


シーリス:「ええ、戻りましょう。アンナは…あ、向こうね」


ミーア:シーリスの手を取って笑顔でダッシュ!



ミーア:「あはは~~!!あたしたちが一番だ!!」夕日に向かって走ろう。いい感じに。


GM:では夕日に走り、街道を駆ける二人を見てアンナはじゃっくをなで、微笑むのだった。


じゃっく(うま):「ぶるるる…」嬉しそうに目を細める()

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