「凍てつく風よどうかどうか止んで⑥」


GM:というわけで翌日。地図に示された場所は、ロシレッタの郊外。

GM:そこには掘っ立て小屋が立っていた。


アンナ:「一応、ここですね。」


トリア:「…いこう。」


ジャック:「ここか……。ふむ。」


GM:中に入ると、地下につながるはしごが掛かっている。


トリア:「……。」降りて行く


GM:地下に降りていくと、扉が見えてくる。扉の前に来た君たちは、どうする?


トリア:「…すぅー…ふぅ…よし。」開けよう


ミーア:「…トリア。いいんだよね?…ううん、何でもない。」


GM:開けると、小さな明かりが隙間から漏れる。

明かりと同時に漏れてきたのは、饐えた匂いだった。かすかな腐臭、その先には…。


???:「…だれだい?」


トリア:「…!お母さん!?トリアだよ!」


GM:寝具に横たわる、女性がいた。


イサラ:「…ッ!帰りな!」


トリア:「…いやだ。お母さんともお話をしたいから。」


アンナ:「…ここは、”守りの剣”の範囲外…。」


イサラ:「見せたくはなかったよ、こんな姿!」


トリア:「…でも。」


GM:母の姿は、皮膚が爛れ、角が生えていた。顔を横切るように包帯が巻かれている。


イサラ:「こんな情けない姿を、さらしたくはなかったよ。」


トリア:「…うん。でも、それでもね。生きてるって。お話ができるって。知りたかった。逢いたかったの。」


イサラ:「片腕も無くなっちまった。片目もない。腰から下は動かない。こんな姿で、どうして会いに帰れるっていうんだい。天下の無双薬師がこのざまだ。なんでグリードは止めなかったんだい!」


トリア:「お父さんと色々話した。きっと受け入れられるか試してたんだと思う。」


イサラ:「あんのバカ旦那!」


トリア:「……。(あー…なつかしいなぁ)」


イサラ:「尻に敷けなくなったってのに、なんであたしをおいていかないんだよ全く…!おまけにトリアまで連れてきちまって!!……いいや。そんなことより。何の用で来たんだい。」


トリア:「お母さんに逢いに。お母さんと話に。」


イサラ:「なんで、来ちまったんだい…。」


トリア:「…そして。シュトラウトを討伐する前にその話をしに来たの。」


イサラ:「バカ娘!アタシでこの状態だってのに勝てるわけないだろ!!」


トリア:「お母さんは二人だった。どれだけ強くても。でも、私には、もっと多くの仲間がいるよ。」


イサラ:「そりゃおめー、昔はちっとは仲間がいたけどさ。」


トリア:「だから大丈夫。自慢の娘を送り出してくれれば。それで、私は戦える。」


イサラ:「あーーーーーもう!!どうしてどいつ(グリード)もこいつ(トリア)も諦めが悪ぃんだい!!」


トリア:「お母さんとお父さんの娘だもん。」


ミーア:きっと一番あきらめが悪くて、きっと一番悔しいのは…


トリア:「諦めが悪いし無鉄砲にもなるよ。」


イサラ:「あぁ、そうだったわ…。面倒な遺伝子を継ぎやがって…。でも、まぁ、なんだ。あたしも一目見たかったよ。トリア。」


トリア:「…私も。逢いたかった。ずっと、ずぅーーっと逢いたかったよ…!」


イサラ:「あたしを死なせなかったバカ旦那も、たまには褒めてやらないとな…。……トリア、こっち来な。デコピンしてやっから。」


トリア:「わかった。死地に行く馬鹿な娘だもんね。」


GM:近づいたトリアを襲ったのは、痛みではなく、片腕での抱擁だった。

微かな腐臭に包まれているはずなのに、それは心地よく、暖かな温度を感じる腕での、力強い抱擁だった。


イサラ:「こんなとこまで追いかけてきやがって…。肌が腐っててすまねえな…。」


トリア:「…大丈夫だよ…お母さんはお母さんだもん…!」


イサラ:「帰ってやれなくて、すまねえな。」


トリア:「…大丈夫だよ。」


イサラ:「片腕しか動かなくて、すまねえな。本当は、思いっきり抱きしめてやりたかったよ。……でかくなったな、トリア。」


トリア:「一生懸命生きて来て。ここで逢えて。成長した姿で逢えて!…そうやって言ってくれて。よかった。」


イサラ:「話には聞いていたよ。あちこちで暴れまわってたらしいじゃねえか。まるで昔のあたしみてーな話ばっかりだ。」


トリア:「あはは…貴族関連ばっかりだけどね。」


イサラ:「トリア。お前はあたしの誇りだ。あー、腹痛めてよかったーーーー。グリードもよくぞ仕込んでくれたぜ。」


トリア:「…その腕はきっといつか。治してみせるから。待っててね。」


イサラ:「よしよし、ちょっと待てよ、家に帰ったら渡してやろうと思ってたもんがあったんだ。ちょっとどいてろ。」


トリア:「うん。」


GM:片腕だけで、イサラは、もぞもぞと動き出した。


イサラ:「どっこいしょ…。ええい不便だなくそ。」


トリア:「手伝う?」


イサラ:「いらん。」


GM:そのまま壁までずりずりと這って行くイサラ


イサラ:「ヒュッ…!」


GM:壁をそのまま叩きつける。ズンという音と一緒に空間が一瞬揺れ、直後、何かが落ちてきた。


イサラ:「よっ、と。これだこれ。あたしが使ってた特注品をさらに改良したものだ。名を「ポーションガーダー改」つってな。あたしが”無双薬師”と二つ名で呼ばれる所以だ。」


トリア:「…なるほど。」


イサラ:「これは、もうお前のモノだ。お前と、お前の仲間を、失いたくないものを助けてくれる。”誰も傷つけない最終兵器”だ。」


トリア:「…ありがと。これでしっかりと。戦える。」


イサラ:「あ、これももっていくか?」ベッドの下をごそごそ


GM:斧が3本でてきますね。彼女が愛用していたフルカスタム両手斧。

そして、1対の、特殊な装飾のなされたオーダーメイドの手斧。


トリア:「…あはは…ヴォージェは…後々使えるようになるといいなぁ…。」


イサラ:「まぁ、売ってもいいぞ。アタシのもんだし、多少は金になるだろうよ。でもこっちは使えるんじゃねえか?」


トリア:「それは絶対しない。いつか使ってみせる。…うん。使いこなしてみせるよ」


イサラ:「ははっ、さすがあたしの娘よ。」


トリア:「えへへ。」


イサラ:「で、だ。そっちの愉快な仲間たちも来い。」


ミーア:「ふえっ?」


アンナ:「はい。」


シーリス:「え、ええ。」扉からひょい


ジャック:「どうも愉快なマスコットです。」


ミーア:気づいたら勝手に涙が出ていた。親という存在を知らないはずのミーアが。


イサラ:「見ての通りあたしは役に立たねえ。穢れのせいで街にまず近づけねえからな。そんで、お前たちはどうやって勝つんだ?倒すんだろ?アレ。」


ミーア:「がんばるよ!!!」


イサラ:「あたし好みな答えが返ってきたな。上等だ。と言いたいのだが。ぶっちゃけそれだと死ぬんで。」


トリア:「ポーションが使えるならやりようはあるよ。船もお父さんが作ってくれるし。」


イサラ:「フリーズフィールドは船の上でも効果を及ぼしてくるぞ。」


ミーア:「あうぅ…さむいやつだ。」


トリア:「…うぅん…そういう情報とかもないかなぁって来たんだけど。」


イサラ:「ははっ、わかってるじゃねーか。用意したのに使えなくて困ってんだ。お前たちが使え。トリアちょっとこっちこい。」


トリア:「わかった。」


イサラ:「えーと、こん中に…これだ。通称レジストポーション。」


トリア:「…市場に出回ってない…ってことはオリジナル…?」


イサラ:「弾き玉とサラマンダーの素材とかいろいろぶっこんで、グリードの協力のもと作った。」


トリア:「ふむふむ。」研究者の顔


GM:「レジストポーション」

効果:半径6mの範囲に対し、水、氷属性のデバフ効果を無効化する液体を散布する。

効果時間:30秒


イサラ:「それ、常温環境で使うとサウナになるから気を付けろよ。」


トリア:「だよね…。」


イサラ:「ポーションボールに詰めて使うこともできるぞ。数は2個しか作れなかった。」


GM:というわけで「レジストポーション」×2を入手した


イサラ:「ちなみにもう作れねえ。無駄にしてくれるなよ。」


トリア:「わかった。頑張ってくる。」


ジャック:「これで、一番の懸念材料も解消できた……。!」


イサラ:「あと使うその時までそのポーチで保管しとけ。実はもう1個あったんだが、常温放置してたら急速に気化してビンごとぶっ飛んで工房が一つダメになった。」


トリア:「うん、用法用量はしっかり守らないとね。」


シーリス:「ありがとう、ございます…!」


イサラ:「ちなみに原理的には、空気に触れると周囲の冷気や水分と結びついて急速に蒸発し、熱を発し続ける。粘度を持たせて持続性を上げて…。」ぶつぶつ


トリア:「ふむふむ。なら…。」ぶつぶつ


イサラ:「それを弾き玉で広範囲に散らしてだな…。」うんぬん


トリア:「ならその技術を流用すれば…。」かんぬん


イサラ:「究極はどの属性にも対応できる原理だが、ここまで寒くてやっと使える代物だから、他の環境じゃ多分無理だな。」


トリア:「…このポーションは改良の余地があるなら完成させなきゃね。」


イサラ:「あたしと、グリードで作った傑作だ。あたしと、グリードの娘が使いこなして見せろ。じゃじゃ馬だぞ?」


トリア:「ん。もちろん。薬師として。研究者としてはお母さんにもお父さんにも負けないんだから。」


イサラ:「大きく出やがって。成長が楽しみだぜ。さて、そろそろ限界だわ。寝る。勝てたら伝えに来い。あ、動けないだけで命に別状はねーからしばらく死にゃあしねえよ。」


トリア:「うん。その時は家族で飲もうねー。」


イサラ:「どうせ、グリードが船を出すんだろ。お前の親父は、戦うのが嫌いなひとなんだ。お前があたしの代わりに守ってやってくんな。」


トリア:「もちろん。お父さんは守るよ。」


イサラ:「しばらくグリードと組んでたけど、ほんと攻撃手段持たねえんだよな…。」


トリア:「お母さんだけで足りるでしょ…。」


イサラ:「あ、帰るならこれ持ってけ、役所仕事しかしねえギルドが途端に協力的になるだろうよ。閲覧権はアタシとグリードと、あたしらがいない間の保護者に指定したツィーリアだけだったからな。」


GM:君たちは「イサラのサインの入った書状」を手に入れた。


トリア:「なるほど。ありがと。あ!そうだ!お姉ちゃんはどこにいるの?」


イサラ:「ちょっと前まで、ここにいたよ。」


トリア:「そっか、じゃあお姉ちゃんにも会いに行かなきゃね。」


イサラ:「トリアのことは大丈夫なのか聞いたら、従者が要るから大丈夫だっていってたが…。」


トリア:「……。」


イサラ:「つい2~3年前だ、この生活になってから時間間隔が狂っててな。」


トリア:「ん。なるほどね」


イサラ:「その従者、ラフタといったか。どうした?」


トリア:「…ラフタは…うーん…あはは…途中ではぐれちゃって…。」


イサラ:「そっちも、いねーのか…。まぁ、挑むなら、顔を上げていけ。」


トリア:「…わかった。よし!大丈夫!」


イサラ:「じゃあな。吉報を楽しみにしてるぜ。」


トリア:「ん。りょーかい!まってて!」


GM:というわけで、あと二日、君たちには準備時間が与えられる。


アンナ:「あと二日、ですか。長いのか、短いのか。正直、私は何も準備はいらないのですが…。」


シーリス:「私は今日は契約を変更するわね。何かあったら呼んでちょうだい」


アンナ:「では今日は休みましょうか。買い出しは明日にしましょう。」


トリア:「ん。了解。」


アンナ:「個人的にはギルドでの見られなかった情報が気になりますが。夜は、私は久しぶりに酒場でゆっくりしますかね。」


ジャック:「確かにな、情報不足は避けたい、明日はそれを調べに行こう。」


トリア:「ギルドの後にそこで手に入れた情報次第かな。まあ後はポーションの調子を確かめて…だね。」


アンナ:「じゃあ、そうしましょう。」

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