「凍てつく風よどうかどうか止んで⑤」

GM:一行は宿に帰ってきた。


ミーア:「ふい~!つかれたあ~~!!」


カーラ:「あら、お帰りなさい。どう?なにか見つかった?」


トリア:「お母さんが私に何も知らせたがらないことと、お父さんが相変わらずってことしかわからなかった。だからお父さんのことで知ってることを少しでもいいから話して。」


カーラ:「知ってることと言われても、あの人はあまり宿にはいなかったのよね…。」


トリア:「そう。お母さんのことからわかることもないかな…」


カーラ:「イサラさんね、大酒飲みだったわ。」


トリア:「知ってる。」


カーラ:「もうすっごいのよ。カウンターの酒が一滴も残らずなくなったこともあったのよ。そして、いいだけ飲んで、別の店いって、グリードさんの首根っこ捕まえて、朝方帰ってきてたわ。」


トリア:「地元の酒場でも同じようなことをやってた。」


カーラ:「うふふふ、あの人らしいわあ。」


トリア:「……そう。…変わってないんだね。どこでも。」


カーラ:「変わらないわ。」


トリア:「そっか。」


カーラ:「人は、10年や20年くらいじゃ、本質は変わらない。」


トリア:「優しいお父さんも変わってない。と、いいんだけどね」


カーラ:「どうして、貴女がそれを信じてあげないの?誰が、あなたたちを保護して帰ってきたとおもっているの。」


トリア:「…なにも話してくれない。私の成長も見ようとしない人…今私が持つ情報はそれだけ。」


カーラ:「それはあなただけが見ている情報ね。私には私が見ている情報がある。」


トリア:「そう。私は私が知っている。その情報しかない。だから知りたい。」


カーラ:「なら、もう少し頼るべき人がいるのではなくて?もっと身近に。」


トリア:「私は…人に心から頼るのに疲れたの。」


ミーア:「ぶえっくしょい!」


カーラ:「頼ってから言うべきセリフね。冒険者して何年になるのかしら。」


トリア:「……1年くらい。」


カーラ:「1~2年足らずで、仲間を見つけて、ここまで成長して。その速度は素晴らしいと思うわ。きっとこのままいけば、国家や地方を超える人族の顔になるかもしれないポテンシャル。」



カーラ:「でも、イサラさんですら、グリードさんを連れて、2人でいたのよ。あなたは、一人でやろうとしている。朝もそう。」


トリア:「私は。冒険者としての成功よりも。家族の団欒が欲しかった。そのためにみんなと組んでる。それじゃだめなの?」


カーラ:「それは仕方のないことよ。冒険者の家でなくても、団欒なんてない人は多いわ。」


トリア:「……。」


カーラ:「団欒が欲しかったのは、あなただけなの?」


トリア:「…お父さんがそれを欲している。そういうのは聞いた。」


カーラ:「ふふ、意地悪な聞き方をしたわね。みんな欲しいのよ。」


トリア:「…そうだね。」


カーラ:「そう、グリードさんも、イサラさんだって、ずっと娘に会いたいと言いながら酔いつぶれていたわ。私の前でだけね。」


トリア:「…どうしてそういう部分を私の前で見せてくれないんだろう?」


カーラ:「ヒトの親とは、そういうものなのよ。」


トリア:「そっか…。」


カーラ:「子供の前では、絶対に折れない強さを持っている。それが人の親よ。」


トリア:「…」


カーラ:「あなたたちの中にもいるはずよ。誰かがいるから、立っていられる人が。それは、なんでだと思う?」


トリア:「わからない。守るため。大切だから?それだけで立てるわけもない。そうでしょう?」


カーラ:「失いたくないからよ。消え入りそうなろうそくの炎を、吹きすさぶ風の中に放り出すことができない。そういう人が貴方の周りにはいるのよ。」


トリア:「…そっか。」


カーラ:「その火は、風から守る壁を温める。火が弱ければ、強くする。貴方という火を失わないために。」



カーラ:「あなたが温めてくれるから、冷たい風に身を乗り出せる。そうして、いつの間にか嵐を超えるのが、冒険者のパーティよ。」


カーラ:「親子の場合は、火が自分で大きくなるまで、守る。仲間の場合は、火が消えないように守る。それだけの違いでしかないのよ。」


トリア:「そっか。でもたまにはどのように火が育ったか。それを見に来て欲しいって思うのはわがままなのかな。」


カーラ:「それはいいんじゃない?わがままくらい言えばいいじゃない。親にだって、仲間にだって。」


トリア:「…そう。」


カーラ:「むしろ、そんなわがまま言えない程度の仲間なのかしら?」


トリア:「…いえ。色々話し、話されたメンバーよ」


カーラ:「気負い過ぎなのよ。ほんと、お母さんそっくり。」


トリア:「そっか。気負いすぎ…か。」


カーラ:「イサラさんだって、街一つを背負って、グリードさんと一緒に海竜に挑むなんて、最初に聞いた時は腹が立ったわ。ロシレッタに対してね!…それでもあの人は、なんとかできるだけの腕があったけどね。あなたにはあるかしら?」


トリア:「…私一人じゃ無理。パーティがいれば。お父さんの船があるなら勝率はある。」


GM:「私にいうことではないわね?」


トリア:「……!」


GM:「いってらっしゃいな。貴方の仲間のところに。」


トリア:「ん。」



GM:微笑みながら手を振り、トリアを見届けてポツリとカーラはつぶやくのだった。



カーラ:「顔見せてやんなさいよ。グリード……。」


トリア:「……ねぇ。みんな。私のために。私の冒険に一区切りをつけるために。冒険に一緒に出て。あの海竜を倒す手伝いをしてくれないかな…?」


アンナ:「…。はぁ…。」


ミーア:「え~~!いまから!?ヤダぁ…疲れたから明日にしよ~~??」


ミーア:あくまでも、受けることは当然。ミーア的には考える余地もないので


ミーア:「明日だったらいいよ!やられたまんまじゃイヤだもんね!!」


シーリス:「何言ってるのかしら今更。当たり前でしょうそんなの。…あのねぇ、私だって一人で動こうとしたわよ。でも、あなたたちは一緒に戦ってくれたでしょう?だから当たり前よ。」



ジャック:「もちろんさトリア、最後まで面倒みさせてくれ。」


アンナ:「私には親がいた記憶はありませんが、ヒトの気持ちくらいわかります。現実を無視して一人で歩いていたから、止めたんです。ですが、私はあなたのために動くと決めていました。」


アンナ:「最初から、最初っから、店でトリアさんの様子が変わったその瞬間から!!」


トリア:「…そっか。ありがと。みんな。」


ミーア:「今さらかしこまってどうしたの~?」


トリア:「よし。もう大丈夫。」


ミーア:「いままでみんなでやってきたんだから当然じゃん!」にっこり


トリア:「ん。ありがとうね、ミーア。」頭を撫でる


ミーア:「!!わーーい!!えへへ~~」にっこり


アンナ:「さてと、グリードさんに接触するところからですね。」


トリア:「ん。お父さんを探さなきゃ。話したいこともいっぱいあるの。」


アンナ:「幼年時の情報しかないでしょうが、御父上の情報はどれくらいありますか?」


トリア:「あんまりないよ。影が薄くてお姉ちゃんも私も見つけるのはほぼ不可能だったの。」


アンナ:「ええ…。」


トリア:「頑張って目を凝らせばなんとか見つかるんだけど…場所がある程度わかってないと…」


シーリス:「えっと…そんなことあるのね…。」


トリア:「明確にどこに居てもお父さんを見つけられたのはお母さんだけだよ。」


アンナ:「おそらく、操舵技能、密偵技能に長けた方ですかね。お話を聞く限り、造船技術もありそうです。」


トリア:「うん。お父さんから操舵技術を習ったんだ。造船技術は教えてくれなかったけど。」


ジャック:「あの津波に耐え続けるのは並大抵のスキルではないな。」


ミーア:「お毛々びしょびしょになっちゃった。」


シーリス:「だんだん強くなっていたものね…。」


トリア:「うん。やっぱり色々教えてもらおう。そして色々話さなきゃ。」


アンナ:「それよりも、この気候が一番の敵ですね…。トリアさんのポーションが凍って役に立たないとは想定外でした。」


ミーア:「すごく寒かった…。」


トリア:「そうだね。効果を薄めれば幾らかは使えるけど…。」


アンナ:「あの攻撃に耐えるためには、効果を下げてはじり貧です。どこかで破綻する戦法は避けましょう。」


トリア:「ん。もちろんそんなことはしないよ。…でもお母さんもポーションはよく使っていたから…なんとかする方法はあるんじゃないかな…いやでも個体が違う可能性もあるし…。」


アンナ:「あとは、海竜といいつつもなんだかんだシュトラウトが高位のドラゴンゆえに全属性の攻撃を持っていることですよね…。」


ジャック:「あれは厄介だな。あれだけは対策がしにくい。」


トリア:「情報が足りない…かな。やっぱり対策を探しに行かないと。」


アンナ:「ですね。夜を待ちましょう。」


ジャック:「ポーションは何かしら温める魔導機でもあればいいんだが。」


トリア:「んー…もしそれがあったとして至近距離に投げるならどうにかなるかな。」


GM:いざ夜を待ち、酒場へと向かう。グリードを探すために!


アンナ:「では、向かいますか。」ドレスモード


GM:からんからんと鳴らし、入店する。

客もまばらに、その店は照明も少なく、薄暗いながらも営業していた。


ミーア:大声の挨拶はない。眠いからそれどころではない。


GM:「いらっしゃい。珍しいな。旅の冒険者か。」


ジャック:「さて……。」周りを一瞥して


シーリス:「こんばんは。」普通に挨拶する


トリア:「こんばんは。とりあえずおとうさ…グリードがいれば隣の席に行きたいです。」


GM:「…よく角にいるな。ぶっちゃけ見えん。」


トリア:「ありがとうございます。」


GM:「カウンターに置いといたらいつの間にか消えているから飲んではいるのだろう。」


ジャック:「じゃあ…。」ここで皆の好みの飲み物を注文しときます


アンナ:「店内を一望できる位置にしましょう。動けばさすがに気付けるかも。」


GM:君たちが会話もまばらに飲んでいる。そんな時。


シーリス:「!?!?」二度見


GM:シーリスは、向かい側の角の席。その背景がゆらっと動くのに気づいた。


シーリス:「!!、!!」すごい勢いで指さし


トリア:「あ、お父さんがいたみたいだね。」すたすた


???:「…。」ぴたっ


トリア:「ねぇお父さん。いるんでしょ?」


ジャック:「……。ん?」


???:「……なんで来たんだ。」


GM:バサッとマントのようなものを脱ぎ捨て、無精髭を生やした優男が顔をのぞかせる。


ミーア:「ふにゃ??」


トリア:「なんでって。…そうだね。お父さんと話すために」


グリード:「母を連れて帰れなかった父の姿でも笑いに来たのか?」


トリア:「そんなことはないよ。」


トリア:「お父さんと。ただ、普通の家族のようにお話がしたいだけ。」


グリード:「…。」


トリア:「私ね?冒険者になったの。お母さんを探すために。」


グリード:「…噂は聞いていた。」


トリア:「そっか。じゃあ成長は知っててくれたんだね。」


グリード:「……。いやでも耳に入ってくる。」


トリア:「あはは。いろんなことしたしね。」


グリード:「…正直。見つかるとは思っていなかった。」


トリア:「あはは。たまにすごいからね。シーリスって。」


グリード:「いい仲間に恵まれたようだ。」


トリア:「…うん。私にはもったいないくらいいい仲間だよ。」


グリード:「さて、トリア。」


トリア:「うん。」


グリード:「帰れ。」


トリア:「嫌。」


グリード:「か、え、れ。」


トリア:「いーやーだー!お父さんの船に乗ってあいつを討伐するの!」


グリード:「ぼくの船だって奴に壊されたんだぞ。」


トリア:「お父さんの船は壊れないもん。どうせお母さんも手伝ったんでしょ?」


グリード:「こーわーさーれーたーの!」


トリア:「こわれないってば!」


グリード:「そこらの漁師や客に聞いてみろよ目の前でバラバラになったの見られてるんだぞ!」


ミーア:「あははー!こーわーれーないー!」酔っ払って楽しくなってきた


トリア:「じゃあわかった!私たちが戦う時は壊させない!」


ミーア:「あたしたちが、トリアが、壊させない!!」


グリード:「戦ったら次に生き残れる確証なんてない!」


トリア:「大丈夫!生き残れるよ!」


グリード:「第一、そんな船がどこにあるんだい!」


トリア:「材料なら言ってくれれば持ってくる。お父さんならそれで作れるでしょ!?」


ジャック:「なに、貴方と船が入れば勝てるさ……。勝たせて見せよう。」


グリード:「材料の問題じゃない!もうあんな技術はない!作れたのはイサラが、母さんがいたからだ!」


トリア:「じゃあ私が手伝う!!!お父さんはあんなやつに負け越していいの!?」


グリード:「イサラほどの怪力があって初めて2人で操舵できた船なんだぞ!」


ミーア:「うちにはアンナもいるし、あたしもがんばるよ!!」


トリア:「ここには5人いる!お父さんもいれば6人だよ!」


シーリス:「私は…力はないけれど、汗くらいは拭くわ。」


トリア:「私だってお母さんの血を引いてるもん!」


グリード:「君たちに筋力51ほどの物理的な力があるのか??そんなはずはないだろ!!」


トリア:「2人じゃない!そういってるでしょー!?」


グリード:「……。ぐ…。」


ミーア:「勝てるよ…だって、そのためにみんなでここに来たんだもん。」


ジャック:「なに一人でダメなら二人、三人とやればいいだけさ。」


ミーア:「トリアは、そのために、お父さんを見つけ出したんだもん。」


ジャック:「作戦は任せろ、船がというピースがそろったおかげで何とかなった。」


シーリス:「そうよ、ずっと会ってあげなかったんだからちょっとくらいわがままをきいてあげればいいじゃない。」


グリード:「ぼくの船がどうして壊れたか、聞いて回って知っているはずだ!」


トリア:「知ってるよ!じゃあそういうことをしてくるって仮定して動けばいいの!」


トリア:「完全な未知じゃないならできることはあるもん!」


グリード:「……!…トリア、君は…。母さんに似てきたな…。くそっ!!」


ミーア:「敵の情報はジャックが抜いた。船はトリアが手伝う。アンナもあたしも力を貸す。傷ついたらシーリスが癒してくれる……大丈夫だよ!」 にっこり


トリア:「お母さんとお父さんの子だもんね!」


グリード:「あの人も殴って血が出るなら殺せるってぼくに散々無茶言ったよ!!…くそ、くそっ!!なんで俺は、娘すら危険な目に合わせるんだ!!」


トリア:「そうだよ!不死じゃないなら仲間と作戦を立てて勝つ!それが冒険者なの!私が学んだことだよ!それをお父さんに見せたいの!」


トリア:「散々娘の成長を見て来なかったんだからこんな時くらい見てよ馬鹿!」


グリード:「あぁもう…わかった。わかったよ!!まったく…。昼間から夜までの間に一体なにがあった。」


トリア:「ん。成長して来た。」


グリード:「どうしてくれるんだ。カーラには、あとで謝っておかないといけなくなっただろう…。」


トリア:「別にお父さんがいろいろやったことでしょー?」


ジャック:「…。」マスターに目くばせして飲み物の追加


グリード:「…君たちが入国した時点で彼女には口止め料を渡して、君たちの面倒を見てやってくれと依頼していたんだ。可能なら帰るように諭せと言っておいたのに。」


トリア:「むぅ。そんなことしなくていいじゃん。私も強くなってるのに。」


グリード:「…わかった。協力する。……トリア。…母さんに逢いたいか。」


トリア:「…うん。」


グリード:「どうしても逢いたいか?」


トリア:「…逢いたいよ。それが私の一つの区切りだから。」


グリード:「…。わかった。」


GM:1枚の紙を差し出してくる。


トリア:「…。」受け取る


グリード:「母さんは、いまここにいる。ぼくの根城だ。」


トリア:「わかった。ありがと。」


グリード:「ぼくはしばらく工房にこもる。君たち5人で操舵できるように調整する。船は、あるんだ。」


グリード:「もう一度挑むつもりで、ずっとこのロシレッタで作っていた。」


トリア:「…そっか。じゃあリベンジしなきゃね。完全勝利しよう。」


グリード:「イサラの手伝いがなく、10年もかかってしまった。イサラには、伝えておく。3日後には調整は終わる、ここでまた会おう。」


トリア:「わかった。全部終わったらみんなで飲もうね。」


グリード:「店ではダメだぞ。」


トリア:「はぁーい。」


グリード:「マスター。この子たちのもぼくにつけておいてくれ。ぼくは急ぐ。」


トリア:「ん。がんばってね。お父さん。」


グリード:「それと、お仲間の皆様。トリアを強い子にしてくれて、感謝している。ありがとう。当日は、よろしく頼む。」


ミーア:「あははー!トリアは強いよ!いつもお世話になってるからね! こっちこそ、よろしく!」にぱー


シーリス:「こちらこそ、船はお願いしますわ。」


GM:深々と頭を下げる。君たちも目線を下げ、再び視線を戻すとそこには誰もいなかった。


アンナ:「…帰りましょう。」


ジャック:「そうだな。」


シーリス:「ええ。」


ミーア:「うん!!」


トリア:「そうだね。かえろっか。」

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