第15話 宣言
僕が席に座るや否や、
「訊きにくいことを訊いてもいい?」
とウィルが言った。僕は、
「何でも訊いてよ」
と答えた。
「ありがとう。じゃあ訊くけど、何でリバーのお母さんは死んでしまったの?」
ジェリーがウィルを肘でつつき、
「ウィル。いくらなんでも無神経過ぎるだろ」
と抗議した。しかし、ウィルは、
「何でも訊いて良いって言ったから」
と、意に介さなかった。
「いいんだよ、ジェリー。僕は何もかも包み隠さずに話したいし、そのためにここに来たんだから。実はね」
と僕が言うと、ウィルが囁くように、
「今度は興奮しないでね」
と釘を刺した。
僕はドリンクをマイクのように握っていたことに気づき、静かにテーブルの上に置いた。
「母さんの自殺の理由は分からないんだ。この前父から聞いたんだけど、母さんは当時取り掛かっていた仕事が終わったら、大学をやめるつもりでいたんだ。その日を心待ちにしていたらしい」
「それなら、何で死ななきゃいけないの?」
そう言うとジェリーはポテトを三本いっぺんに口に放り込んだ。
「分からない。今でもさっぱり分からないよ」
僕は首を横に振った。すると、ウィルが、
「それなら」
真剣な眼差しで僕に訴えかけるようにこう言った。
「僕たちで理由を探ろうよ」
「え?」
僕は困惑した。
「だって、知りたくないの?」
ウィルの追及は厳しかった。
「いや、知りたいけど」
僕は返事に困った。
「じゃあ、僕とジェリーと三人で捜査しよううよ」
「・・・」
僕は何も言えなかった。まさか、このような展開になるとは想像していなかったからだ。
そして、ジェリーがさらに事態を悪化させるようなことを言った。
「そもそも、本当にお母さんは自殺したの?」
「え?」
「変だよ。絶対に変だよ。親って、普通は子供を守ろうとするはずだろ?リバーも言ったじゃないか。子供を置いて一人で死ぬなんて絶対におかしいって。これは何か裏があるよ。警察は何をやっているんだ」
今度はジェリーが立ち上がった。ウィルがジェリーの腕を掴んで座らせようとしたが、ジェリーは構わず両手をテーブルに突くと、
「俺たち三人で犯人を掴まよう」
と勝手に宣言した。
僕は大きく溜息を一つつくと、ウィルを見た。勢いで動く僕とジェリーとは異なり、ウィルは冷戦沈着なタイプだと僕は見込んでいた。僕はウィルがジェリーを落ち着かせてくれると期待していた。しかし、ウィルは見事に僕の期待を裏切り、
「三人で捕まえよう。これは神様の意志だ。冒険は犯人を逮捕した後だ」
と火に油を注ぐような発言をした。
「ああ」
ジェリーが大きく頷いた。
「ちょっと待ってよ」
僕は大いに困惑したが、同時になぜか嬉しかった。
1979 Karasumaru @kennyblink360
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