第14話 演説

僕はストローでドリンクを吸い上げ、喉を潤した。


僕は何とも言えない高揚感を覚えていた。話しを聞いてくれる人がいる幸せを噛み締めていた。


ウィルとジェリーの好奇心に満ちた視線が僕に注がれる。


僕は咳払いをすると、自己紹介を始めた。

「はじめまして。板倉大輝です。でも、二人にはリバーと呼んでもらいたいな。中学一年生で、サッカー部に入部したけど、今は訳あって帰宅部です。ウィルには手紙で伝えたけど、実は、二ヶ月前に母が自殺しました。母は横浜の大学で研究をしていました」

「え?」

ジェリーが素っ頓狂な声を上げた。隣のテーブルで食事をしていたスーツ姿の男がドリンクを落とした。

「ジェリー、静かに」

ウィルが人差し指を口に当て、ジェリーを窘めた。

「だって、普通驚くだろ」

ジェリーが眉をひそめ、不快感を表した。

「続けて」

ウィルが僕に続きを促した。


僕は再び咳払いをした。

「驚かせてごめんよ、ジェリー。でも、本当なんだ。母が自殺しても、僕は何事もなかったかのように過ごそうとした。ショックだったけど、現実に起きている出来事のようには思えなかったんだ。だって、普通、母親が中学生の息子を置いて、死のうとはしないだろ?」

ジェリーが無言で頷く。

「周りは僕にどう対処すれば分からなくなったんだろうね。僕自身どうすればいいのか分からなかった。だから、みんな、徐々に僕から距離を置くようになった。そして、僕は気づいたら空気のような存在になっていたんだ。学校に行き、誰とも会話を交わさずに、先生に言われたことだけをして、終わったら家に帰る。サッカーもやめた。機械みたいだろ?」

僕は溜息を一つつき、ウィルを見た。

「でもさ、そんなときに、シネマフレンドの君のメッセージを見たんだ。運命だと思ったよ。僕はお預けを食らっていた犬のようにすぐに飛びついたよ。神様がチャンスをくれたんだと思った。「おい、次はうまくやれよ」って。だから、僕は君たち二人に誓うよ。僕は絶対に、絶対に冒険するんだ。そして、天国の母さんに僕がしっかりと生きているってことを証明したいんだ。人生は冒険だろ。まさに山あり谷ありだ。今は深い谷間にいるけど、これから山に登るんだ。高い山にね。以上」

そう言うと僕は二人を見つめた。


なぜか二人とも恥ずかしそうに下を向いていた。ウィルが僕を見上げ、早口で、

「分かったから、まずは座って」

と言った。


そのとき僕は自分が興奮のあまり立ち上がっていたことに気づいた。


僕は赤面して、静かに着席した。


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