第5話 便箋
僕は逃げるように自分の部屋に入ると、ドアを慌てて閉じ、鍵をかけた。
鞄をベッド目掛けて放り投げ、勉強机の引き出しからハサミを取り出した。
僕は、封筒の上から2ミリくらいの場所に刃を入れ、水平方向にハサミを走らせた。
僕の予想通り、封筒には便箋が入っていた。
B5サイズの和紙のような、ちょっとザラザラした触り心地の、薄いブルーの便箋であった。
___
リバーへ
メッセージを送ってくれてありがとう。
今日は少し僕のことを話そうと思う。
僕も君と同じく中学生1年生だよ。でも、ついこの前病院から退院したばかりで、実際には合計で1週間ぐらいしか登校していないんだけどね。
だから僕には友達はいない。小学校の頃は友達はいたけど、卒業と同時にこっちに引っ越してからは一人ぼっちだ。
でもね、やせ我慢に聞こえるかもしれないけど、入院生活はあまり寂しくなかったんだ。
同じ病室に一時期入院していた9歳の男の子のお父さんがすごく映画が好きな人でね、よく映画の話をしてくれたんだ。
このおじさんの計らいで、たまに病室にテレビを持ち込んで一緒にビデオテープに録画した洋画を見たんだ。
いろいろな映画を見たけど、一番のお気に入りはスタンド・バイ・ミー。知ってるよね?
少年たちが、死体を見つけて、有名になるために冒険の旅に出る物語だよ。
なんか、自分を重ねて、僕も旅に出てるような気分になったんだ。
その時決めたんだよ。退院したら、きっと僕も彼らのように冒険するってことを。
でも、冒険には仲間が必要だよね。僕は退院したとはいえ、病弱だし。
そこで、シアターのシネマフレンドのコーナーで仲間を募集することにしたのさ。
君が仲間一号だよ、リバー。
でも、はっきり言って、どんな冒険になるのか、どこに行くかさえもまだ決まっていないんだ。
だから、もし、何かアイデアが浮かんだら、遠慮せずに教えてほしい。
そして、君のことも少し教えてくれると嬉しいな。
あと、今後は裏に書いておいた住所に手紙を送ってほしい。
ちなみに僕の本名は、桜井雄介です。
でも、できればウィルと呼んでほしいな。
それでは、また!
ウィルより
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