第4話 終業式
ペンフレンド募集の投稿に対してメッセージを送る場合は、まずシアターを介してやりとりをすることになる。
シネマフレンドのコーナーに掲載されている住所に、メッセージとメッセージを送りたい相手を明記した便箋を封入した手紙を郵送する。
シアター宛てに手紙を郵送してから丁度一週間が経過した。
7月20日の今日、学校では終業式が執り行われた。
私はいつも通り、なるべく生徒や先生と関わることがないように心掛けた。
そして、いつも通り、私の試みは成功した。
私は成績表を確認することもなく、通学路をいつものように上の空で歩いて帰った。
父の自動車修理工場の前で私は立ち止まった。
父が軽トラックの下に入り込んで、作業をしている。
僕は小さな声で、
「ただいま」
と言った。
母が自殺する前、父はどんなに忙しくても私を出迎え、大きな声で「おかえり」と声をかけてくれたものだ。そして、僕を質問責めにして、学校で僕がどのような一日を過ごしたのか知りたがった。
もし、今も母が生きていたら、いの一番に父は僕の成績表を見たがったはずだ。
僕はそんなことを想像しながら、
「成績表、リビングのテーブルの上に置いておくから」
と言った。
父は作業を進めながら、
「分かった」
とだけ返事した。
私は工場の隣の木造2階建の自宅の前の郵便受けをあけた。
郵便受けには大量の広告に紛れて、A4サイズの白い封筒が挟まっていた。
白い封筒には、シアター シネマフレンド係と記されていた。
私は、はやる気持ちを抑えて封筒を脇に挟み、靴をつまずきながらも脱ぎ捨てると、2階へと駆け上がった。
2階には僕の部屋があった。
僕は久しぶりに胸の高鳴りを感じた。
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