第7話東城の過去
「うわー!アランさん日本食まで作れるんですか?
俺マジ尊敬しますよ。俺一人だと大体コンビニ弁当ですからこんなの作った事もないです。」
アランの横で作っている姿を見ながら野中は純粋に驚いていた。
以前あった新宿駅テロ事件以降、時々蓮とアランの家にやってきていた。
野中は新宿署の刑事にも関わらず二人の素性を知ってもなお、こうして夕食時にやってきては一緒に夕食を食べながら事件に関しての情報を流していく。
アランが手早く出来上がったご馳走を皿に盛り付けるとそれを野中がテーブルまで運んだ。
テーブルの上に夕食の準備ができたところで野中が蓮を呼んだ。
「蓮くんご飯出来たよ。」
蓮は誰の家だか分からないなと思いつつテーブルについた。
「あ!この魚の煮付けマジ美味い。一体どこで習ったんですか?」
野中は魚を口に入れながら美味い美味いと言って食べている。
さっさと自分の分を食べた蓮は野中に話しかけた。
「それで?何かわかったことがあるんですか?」
「そうそう、それなんだけど襲撃犯が自首して来たんだよ。」慌てて口の中のものを飲み込んだ野中が言った。
「自首?それで誰だったんですか?」
「それがね、流星会の下部組織の人間だったんですよ。会長に恨みがあったって白状してるんですよ。」
アランと蓮はその話を聞き目を合わせた。
「そうなんですか?本当に?」
「ヤクザ同士のいざこざだから真偽はわからないですけど、組織犯罪対策部の方はそれで落ち着きそうですよ。」
野中には、蓮が見たのは銀龍会の人間だった事は話していなかったから、蓮もアランもそこは話を聞くだけに留めた。
夕食後、野中が帰って行くのを待って蓮とアランは襲撃犯について話しあった。
「やっぱり銀龍会が裏でかんでますね。自首した奴は恐らく襲撃犯の一人とみて間違いないでしょう。でも、主導者は銀龍会がらみかと思います。」
「銀龍会は東城をどうしても陥れたいらしいな!」
アランの推測に納得しつつ蓮はさらに聞く。
「それで、この間の運転していた奴についてわかったのか?」
「あ、それでしたら、こいつですか?」
アランは持って帰って来た鞄の中から写真を取り出し蓮に確認した。
「名前は堺 礼二。銀龍会の幹部、生田 浩一の下についている奴です。生田はかなり悪どいことまですするので有名ですね。証拠が無いので警察もお手上げな感じで色々失踪事件なんかにも関わっているみたいです。
「こいつだ。界と生田か。こいつらはほっとくと
何をしでかすかわからないな。」
「流星会へは何か情報を流しますか?」
元々ヤクザ同士のいざこざなのでアランは流星会に
落とし前をつけさせたらどうかと聞いて来た。
「流星会と銀龍会の争いで犠牲になるのは一般市民だからな、敢えて流星会には知らせるな。
銀龍会にはきっちり落とし前をつけさせてもらうよ。と、その前に俺の周りをウロチョロしてる虫をどうするかだが。」
「流星会ですね。私の周りにもいますね。それでどうしますか?」
蓮は少し考えるそぶりをしたがすぐにニヤッと笑った。
「アランそう言えば、東城についても調べは終わってるんだろ?」
すぐに答えが返ってくるかと思っていたアランは突然の蓮の質問に慌てた。
「え?あ、はい。東城の資料はこれです。」
すぐに鞄からファイルを取り出して渡した。
そのファイルには東城の今までの来歴などが書かれており蓮を驚かせるには十分な内容だった。
東城 司は幼い頃よりこの新宿で育ったが家庭環境はとても良いとは言えなかった。父親はギャンブルにのめり込み借金を作り、母親はその借金を返すため身体を売っていた。父は母に金がないと言っては殴るような人物だった。司本人は勉強の出来る子供で、中高共に良い成績を修め高校卒業後は奨学金で大学へ行く予定だったが、そのお金も父親が使い込んだ。
ある日、司が学校から帰ると母親が父から暴力を受けていた。それを見て台所から包丁を取り出し父を刺した。そして家の中に灯油を撒き火をつけたのだ。
家から上がった炎は瞬く間に広がり隣近所を巻き込んだ。この火事で5人もの死者が出た。
自宅前で茫然と立ち尽くす司は警察官によって現行犯逮捕された。その後未成年ながらも多数の死者を出したこの事件の判決が確定し、司に少年刑務所での5年の判決が確定した。少年刑務所では模範生だった為5年の所4年半で出所となったが親殺しであり、隣人を巻き込んでの事件だったのとで出所後は中々仕事も決まらず相当苦労した。
そんな時、先代の流星会会長と出会い拾われたのだ。これ以降東城 司が関わったとされる事件の殆どが証拠が無く逮捕されても証拠不十分で起訴には至っていない。
中でも、先代流星会会長が命を狙われた事件で主犯と目されていた人物が突如行方不明になり半年後、白骨化した遺体で発見されたと言う事件の際は、目撃者などから東城 司が犯人とされたが、警察は物的証拠を得られず釈放された。と言うのがあった。
その後は最年少ながらも確実に地位を築いて先代の遺言により跡目を継いだ。この時反対する者は誰一人いなかった。
そして若頭の林田に組を任せると自身はネット関連の会社を立ち上げて現在に至った。
「へえ〜あの人凄いね。あの若さで会長だから何かあるとは思ってたけど相当ヤバイ奴じゃん!」
「取り敢えず、界と生田から話を聞いてからだなぁ。アラン、一つ頼みがある。」
蓮はそう言って口元に笑みをうかべながらファイルをテーブルの上に置いた。
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