第4話襲撃

この日、東城 司は新宿にある某ホテルで財界の要人達と食事をしていた。東城 司 表の世界ではインターネットを使った事業を成功させ今では財界でも知られている若手実業家だが、あまり知られてはいないが広域指定暴力団流星会 会長でもあった。流星会はほとんど現 若頭である林田に任せきりで自身はインターネット事業の方に力を注いでいる。

この時も現政府の方針や今後の展開などについて情報交換を兼ねて話している最中だった。


いつもの事ではあるがテーブルから少し離れた場所に待機させていた秘書が東城の側まで来て耳打ちしたのだった。

「皆さんちょっと失礼します。」さっと席を立って話せる場所まで来ると秘書に向かって確認した。

「林田から?何用だ?」

先ほどの林田からの連絡を受けたと言う報せを受けての質問に対して

「多田が薬物がらみで捕まったと報告がありました。それで対処をどうしたらいいかと林田からの連絡ですが、どうしますか?」それに対して東城は詳しく聞きたいから事務所へ戻る指示を出し、自身は先ほどまでいたテーブルへと戻った。


急用ができた為の中座を食事仲間へと謝ると直ぐにホテルを出て流星会の事務所へと急いだ。

事務所へ着くと数人の組員が迎えに出て来てその者達を従えるように事務所へと入った。

「それで?」事務所の一番奥にある部屋へ入った東城は椅子に座ると林田に向かって説明を求めた。

「すみません。組長 。」

深々と頭を下げた林田が事の顛末を聞かせた。

「今すぐ筆と紙を用意しろ!」

用意された紙に筆で多田の破門状をしたためると直ぐにFAXで各会派へ送信するように指示を出した。


「多田の一件は誰の仕業だ?」

「警察からの情報によると誰が多田を襲ったかはまだわからないそうですが、多田がやっていた事の背後に銀龍会がいるらしいです。警察は組同士のトラブルと決めつけて捜査しているようですが、一部では銀龍会と流星会の両方ともを潰そうとしている別の組織の犯行説もあるみたいです。」東城の質問に林田が警察で多田が話した事を詳しく答えた。

「それで、お前の考えはどうだ?」

「多分、素人の仕業ではないと思います。知り合いの刑事が言うには全く手ががりがないそうです。多田のマンションの防犯カメラにそれらしき奴の姿は全く映っていなかったそうで、奴の部屋は最上階にある為普通のコソ泥なんかじゃ侵入出来ないと思います。」

「それは不味いな。何者かがここ新宿にいるって事だろ?敵か味方か何れにせよわからないって言うのは嫌なもんだな。

この事務所もガサ入れされるはずだからかたずけとけよ。それからお前の方でも調べてみろ。」

邪の道は蛇とでも言うのか警察内部の発表されていない情報も東城に報告して今後の指示を受けた林田は早速情報収集に走った。


数日後、ネット会社の東城の元に不審な小包が届いた。箱の中身はUSBが入っていて、秘書から渡されたそれをパソコンで確認するとその中には、明らかに警察の事情聴取ではない多田の自白する声と映像が映っていた。多田の声と共に犯人の声らしき音が入っていたが加工されたような声音になっていた。

東城はすぐ秘書に音声を解読して元の声に戻すように指示を出したが秘書からの返事は加工の技術が高く音声は復元できないとの回答だった。

一応林田にもその事を伝え銀龍会に対してこちらからは動くなと指示を出した。

林田からは銀龍会へ意趣返しを求められたがそれには応じず当面の間大人しくしているように組員全員に徹底させるように命じたのだった。

「それにしても面白い。誰の仕業でどうやったのか……」

顎に手をあて独りごちる東城だった。


大学受験も終わり後は結果発表を待つだけとなった蓮は家にいても暇なだけだと思い立ち散歩するために代々木公園に向かって歩いていた。公園そばの横断歩道で信号待ちをしていた蓮は前方の歩行者用信号が青に変わったため渡ろうとしてふと足を止めた。蓮の右側で赤信号で停止した車の横に黒塗りのSUVが横にピッタリと並ぶようにして停まったかと思った瞬間助手席側の窓が下りて中から隣の車めがけてマシンガンをぶっ放したのだ。

一瞬の出来事だった為何が起こったかわからない他の横断者達は悲鳴と共にパニックになった。

蓮は咄嗟に流れ弾を警戒して車の陰に隠れたのだったが、パニックになった者達によって親からはぐれた少女が横断歩道に取り残される形になり丁度真ん中あたりで泣いていた。

その時、響きわたっていたマシンガンの音が止みSUVが少女めがけて急発進したのだ。蓮は咄嗟に少女を抱き抱えたが回避する事が出来ずそのまま跳ね飛ばされた。蓮は少女を庇ってそのままアスファルトの上に叩きつけられた。

腕の中の少女の無事を確認した後蓮は意識を手放したのだった。








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