第2話薬物汚染

夏以降あった台風被害の爪跡もまだ残ったまま季節は流れ今年も師走の忙しいシーズンになった。

高校生達も冬休みに入り街中が忙しくなった。


野中と岩本は先日起こった歌舞伎町での事件の捜査で一軒一軒聞き込みにまわっていた。

店主に話を聞いて出てきたところで知り合いの高校生と出会った。

高校生の名前は 朔田 蓮 と言って新宿にある都立高校の生徒だった。今年の夏のはじめに起こった菱丸銀行立て篭もり強盗事件の際に知り合ったのだが、

彼はとても特殊な生い立ちだった。幼い頃シリアでテロリストに家族を殺されなおかつ本人は誘拐され殺人兵器にされたのだ。色々あり15歳で帰国し高校生としての生活をしているが、その実、海外ではスキップして大学をすでに卒業しているのだ。この事は野中を含め3人しか知らない事で、蓮の保護者で同居しているアラン・サフィール 、そしてもう一人の保護者で現在アラブ首長国連邦にいるアル・ワリード そして野中、三人とも蓮に助けられた過去を持っていた。

「やあ!蓮くん久しぶり。」岩山が蓮に声をかけた。

「こんにちは!ご苦労様です。」蓮が答えた。

「高校生はもう冬休みか?ちゃんと勉強しろよ。」と言いながら先を歩いて行った。野中は蓮に夜家に行くからと耳打ちして岩山の後を追った。

蓮は、なんだろうと思いながらもそのまま家へと帰って行った。

その晩10時を少し過ぎたところで野中が訪れた。蓮から野中の事を聞いていたアランが出迎えお茶を入れてくれソファーに座った。

「それで何かあったんですか?」それまで見ていたテレビを消すと蓮が聞いた。

野中は先日あった事件の事を話し何か知っていることがあるかと聞いてきた。

「近頃又MDMAが若者の間で広まっていると聞いています。主に外国人が絡んでるらしいですね。

それに、暴力団が覚醒剤をばら撒いているって噂はあります。なんでも、女に薬を打った後抜け出せなくしたところでソープに売って金を絞り取っているようですね。」噂ですがと念を押した上で、教えてくれた。

本来なら刑事が一般市民に情報を漏洩するのは守秘義務違反にあたるのだが蓮に命を助けられまた、蓮の過去を知ってからは度々ここを訪れ情報交換をしていた。彼らの情報量は豊富でそして何より正確だった。

野中は、他にも情報が入ったら知らせて欲しいと言い置いて帰って行った。


アランの話によると近頃は日本でも大人から子供にまで薬物汚染が広まっているらしかった。昔から覚醒剤や大麻などの薬物が出回っていたが、近年は若者でも簡単に手に入るような物もあって薬物汚染はかなり拡がっているらしかった。その事を裏付けるようにテレビのワイドショーでは大麻や覚醒剤その他コカインなどで検挙された芸能人のニュースは後を断つことはなかった。









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