貴族と平民、落ちこぼれと優等生、真面目なおっとり系と自由奔放な問題児。
なにもかもが真逆なふたりが友情を育む、温かな物語。
……だったのは序盤の話で、途中から急転直下の大事件が起こります。
ろくでもない大人たちの思惑に振り回され、運命に弄ばれてしまう少女たちの姿には胸が痛みます。
正直どうやってこれにオチがつくのか、まさかバッドエンドじゃないよね……?と「不憫」タグを横目にハラハラしながらも、ページをめくる手が止まりませんでした。
そう、そんな状況でもすらすらと読めてしまう心地のよい文章です。
主人公たちの活き活きとした動き、美しい魔法の描写、そして社会の残酷さ。そのどれもが無駄のない洗練された言葉選びで表現されています。
読んでいてすんなり頭に入ってくる、ゆえに、辛いシーンではそのしんどさがダイレクトに伝わってきて、思わず読み手もぐっと息を詰まらせてしまいます。
そんな本作、ハードな展開を含みながらもなんと75000字強という読みやすい文量でまとめられております。文字数まで無駄がない。
さらりと読み終えてしまうけれど、主人公たちの友情についてはしっかりギュッと凝縮されているので物足りなさはありません。
キャッチコピーのとおり、ふたりはお互いの存在が支えになる。なおかつ、きちんと自分で自分自身の価値を決められる。
今後またひどい大人に振り回されようとも(そればかりは避けようがないんだろうな……とも理解できるほど、そこまでの描写がきっちりしているのが切ないですが)、きっとふたりで前を向いて進んでいける。
ふたりがそれぞれ幸せを掴めますように。そしていつかは『魔女』も救われる日がくるといいな。
――そんなことを思わせてくれる、爽やかながら少し切なさもあるエンディングでした。
以上です。長々と失礼いたしました。
最後に作者さまへ、楽しい時間をありがとうございました。
魔法の制御を不得手とする落ちこぼれの少女、ユーフェミア。
優秀ではあるもののその出自や気質から問題児扱いされている少女、レイラ。
二人の出会いは、それぞれ鬱屈とした感情を抱えていた彼女達の運命を大きく変える。やがてその変化は、かつて国を守護した聖魔女へと繋がっていき――。
出会いによって、少しずつ二人がより良い方向に変化していく過程が微笑ましい。
そうして巻き起こる思いがけない事態。少女の存在の根底を揺るがす事実と虚しさ。その果てに舞い降りる聖魔女。
立ちはだかる困難から繰り広げられる友情の物語が清々しく、二人のこれからが楽しみになる物語でした。