第38話 「じれったい踏切」
踏切、これはタクシー運転手にとって時にやっかいな相手になる。
特に、お客様をお乗せしている状態であれば時間メーターが上がるため、
その踏切の待っている時間が長ければ長いほど料金が上がっていく。
ただ、場所によっては踏切を通らざるを得ないときも出てくる。
そんな時に「開かずの踏切」にあたってしまえば最悪だ。
そうでなくても、踏切の待ち時間は本当にむず痒い。
踏切には矢印が付いている。「→」の矢印が出ていれば、
踏切が鳴っている間、左から右へ電車が流れていく。
「⇆」こう表示されていれば、両方から電車が流れていく。
右から左への電車が先に通り過ぎれば、あとは「→」の表示だけで
その電車が通り過ぎるのを待つだけだ。
徐々に徐々に右へと流れ、もうあと2両ほどで通り過ぎる、
ようやく踏切が開く。
「(あと一両、一両の半分、よし)」
そう思っていると逆方向の表示が点く。
「(おい~、あともう少しだったのに~、)」
再び「⇆」この表示になり、今通り過ぎたはずの左から右の電車の表示も
消えずに点いてる。
「(まだいたのか~)」
さきほどの、あと一両、なんて思っていたのも無駄だった。
その後ろにも続いていたのだから。
それからまた電車を待ち、右から左に流れる電車が先に通り過ぎた。
「→」表示だけになる。
「(これが通り過ぎれば、、、一両、一両の半分、よし)」
これで開く、「→」の表示が消えれば遮断機が上がる。
ほんの数秒の待ち時間がスローモーションのように流れ、
電車の音が遠ざかっていく。
「(上がる、、、)」
「←」
「(おいー!!来るんかい!!
さっきまで←の表示無かったのにー、
開かずにまた←が点くならいったん消えずに点いとけよー)」
これは怒っているわけではない。
焦らす踏切を楽しんでいる面ももちろんある。
「(ったく、じれったいな~)」
なんて思いながら、だいたいこうなると
「開かないっすね~」みたいな会話になる。
踏切ってこれだから~なんて話ながら視線を外していると、
「⇆」
「(おいーーーー!!!!)」
そして片方の電車が通り過ぎ、
「⇆」
「(おいーーーーーーー!!!!!)」
全然消えない。。。
右から左の電車が通り過ぎ、片方が消え
「→」
「(よし、あともう片方、次は開いてくれよ~)」
相変わらずその時間は長い。
ようやく電車が通り過ぎ、消えた。
遮断機が上がる。
「(よし、これで行ける)」
今すぐにでも渡りたいが前には二台いる、
踏切はいつ鳴り出すか分からない。
「(頼む、行ってくれ、頼む、まだ鳴らないでくれ)」
一台目が渡り、二台目が一時停止、そして動き出す。
「(やっと渡れる、)」
踏切前で一時停止をし...
「カン、カン、カン、カン、」
「(やばい、やばい、やばい、やばい、)」
線路を跨ぐことによって起こる振動は荒波のように体を揺らす。
間一髪渡り切れた。
踏切を渡り切ると、反対車線で踏切待ちをする車が数台並ぶ。
彼らもこれから同じように、焦らされ、
そして荒波を渡って行くのだろうと思うと
励まし視線を送りながらすれ違っていく。
踏切の先の信号で止まっている。
もう渡り切ってしまえば清々しい。
後ろで踏切を待つ者たちを背に、
バックミラーから励ましの視線を送っていると、
電車が通り過ぎ、遮断機が開いた。
「(えっ!)」
まだ、信号待ちで止まっている。
真後ろで踏切にかかった車が近づく、
青にならない。
とうとう、踏切を渡ってくる車たちが僕の後ろで信号待ちをした。
「(おいーーーー!!さっきあんだけ待たせたくせにーーー)」
今度はいっこうに閉まらない踏切を背に、アクセルを踏んだ。
渡り切ってもなお、感情の波が収まらない。
あの踏切、、もしかして、、、。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます