第22話「口に出すのが照れちゃう目的地」

50代前半ほどの男性をお乗せした。

スマホを操作しながら、乗ってくると

目的地をいう時に「ぶふっ」と吹き出すように笑った。


スマホの画面のメールか何かが面白かったのだろう。

そう思いながら目的地を聞くと、再び笑いながら

「なんでしたっけ?あそこ、、」

「はい」

「えっとー、神谷町のちょっとさきの」

「芝公園ですか?」

「いや」

「赤羽橋ですかね?」

「いや」

「虎ノ門でしょうか?」

「違います」


この時点でなんとなく見当はついた。

きっと「御成門(おなりもん)」だろう。


東京には「御成門(おなりもん)」という地名がある、

東京タワーから目と鼻の先くらいの場所。


お客様はその「オナリ」という文字で何かを連想し、

乗ってくる際に笑ってしまったんだ。

そう予想した。


しかし、なかなか「御成門」とは言わない。

もう連想してしまった以上は恥ずかしくなってしまったのか。


既に見当がついていた僕も何故か「御成門ですか?」と聞けない。

いつもは普通に口に出すが、お客様が恥ずかしそうにしているのを見て

なぜか僕も恥ずかしくなってしまった。


何度も通っていると、特に気にはならないが

やっぱり反応してしまうのだろうか?


「御成門」

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