第20話 「嬉しくなる笑み」

とあるビルへとお客様をお送りした。


目の前には、別のお客様をお送りしてきたタクシーが止まっている。

車種はセダン。セダンでもコンフォートという少しグレードの低い方。

さらに、会社は大手でなければ、有名でもない。


お支払い中のそのタクシーの先にはタクシーを待つお客様の列がある。


普通の流れでいえば、目の前のタクシーが先にお支払いを終え、

並んでいる列のお客様をお乗せすることになる。


そんな状況の中、僕のタクシーが後から着いたのにもかかわわらず、

支払いは先に終わった。


未だ支払いが続いているタクシーを避け、列の前に行くと、、、

先頭のお客様の口元がなぜかユルユルになり、笑みがこぼれそうになっている。


そこで気が付いた。


きっと、先に来たタクシーより

このタクシーに乗れることが嬉しいんだと。。


なぜなら、こっちはまだ走る台数が少ないJPNタクシー。


タクシーを待つ間のお客様の頭の中を想像してみた。


「タクシーまだ来ねーなー、、、あっ来た!

いや、でもあの会社か~、まぁしゃーない、待つよりは乗った方が良い。

と思ったら~後ろからJPNタクシー来たー!

いや、でも後から着いたからさすがにあれ(JPN)には乗れないか~

・・・・、、、あれ、

先に着いたタクシーがまだ支払いしてるぞ、

後から着いたJPNタクシーの支払い終わりそうだぞ!

これは、あるぞ、後から来たJPNに乗れる、俺はあれが乗りたい、

頼む、JPN来てくれ、早く、どうだ!

・・・・・・。

おっしゃーーー!

JPNタクシーが来たーーー!」


ということがお客様の頭の中で行われていたのかもしれない。

それが思わず口元のユルユルに出ていたように感じた。


喜んでくれるなんて、そんな嬉しいことは無い。


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