第8話 「値切る輩」

新宿で男女4人組が手を上げた


停車する寸前、運転席の私を見て

女「若い運転手来たけど」

と、口が動いているのが見えた。


扉を開け、聞こえてきた男の声は

男「俺成功したことあるから、イケるイケる、任せて」


男が声をかけてきた。


男「運転手さん、この4人で〇〇まで△△円で行けます?」


その金額で行くのは到底不可能な距離、そして、大幅な迂回等よっぽどのことがない限りメーターの表示金額をお支払いするタクシーで

値切りをしてきた。


私「いや~、それは難しいですね」


当たり前のことだが、断ると、横からもう一人の男が口を出してきた


男「運転手さんののテクニックで安く出来るでしょ~!」


物理的に不可能なことを、

運転手のプライドを突くように煽る。


私「いや、これは無理ですね」


少し癪に障った私は、口調に丁寧さを欠いてしまう。


男「前は行けましたけどね~」


そんな訳がない。

ナビで距離を確認しても明らかに無理なところを。

嘘をついている。


私「それはおかしいですね。この距離でその値段は無理です」


多少遠方ではあったが、全く持って乗せたいとは思わない。

そんな気持ちが口調に出てしまっていた。


男は値引き交渉をあきらめた。


扉を閉めるギリギリの隙間から聞こえてきたのは


女「やっぱりおじいちゃん運転手狙わないとダメだね...」


狙うヤツと、それに妥協する運転手がいる。


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