第17話 キャベツ
「ピンポンピンポンピンポンッ!」
午前中チャイムが騒々しく鳴った。基本的に田舎だし誰も来ないしっていう毎日を送っているので、チャイムの音だけでも本当にびっくりする。
しかも私は、「ピンポ~ン……〇〇で~す」というくらいのテンポと音声が好きなのに、3連打のピンポンが早くてビビった。
急いで玄関に行き、扉を開けてみると、小さなおばあちゃんがいた。誰?
麦わら帽子をかぶって、ピンクの花柄のトップスを着て、にっこり笑っていらっしゃる。そして言った。
「キャベツあげっから袋もってきないさい」
「……え?」
あんまり唐突な展開なもんだから、私の頭が真っ白に。3秒後。やっと思考がキャベツという単語を処理できた。すると、「あー!工務店のあのおばあちゃんだ!」と合点がいった。以前、庭のことでお世話になったとき、キャベツを沢山もらったのだ。
でも、まだなんだかよく状況がのみこめず、「え? 袋?」と訊くと、おばあちゃんは、にっこりと笑って、「そうだよ。キャベツあげっから」と答えた。なんだか知らないけれど、工務店のおばあちゃんがキャベツをくれに突然来てくれたことを理解し、「ありがとうございます」と言ってから、すぐにキッチンへ行って袋を探した。が、しかし迷う。
「どのくらいくれるつもりなの?」
大きい袋を持っていったら、なんかアレだし、小さいの持っていったら、「そんなにちーせーのに入んねーよ」とか言われそうだし……。
ということで、中くらいのビニール袋を選び、庭に出てみると、軽トラックに大きなキャベツがいくつも乗っていた。それをおばあちゃんが、「よいしょ」と1玉1玉おろして、袋に入れてくれた。
4玉も!
私は、キャベツが入ってずっしりと重いビニール袋を手に、「ありがとうございます。また何かあったらよろしくお願いします」とおばあちゃんに会釈をした。実際、お世話になるとしたら、またこのおばあちゃんの息子さんがやっている工務店だと思っているし。とても、安価でしてくれるし……と思っているから。会釈し終わって顔を上げたら、おばあちゃんの笑顔が「そうね。そのためのキャベツ」って感じだった。
キャベツ営業か。
と、そんな損得な大人の事情や、忖度やらなんやらが頭によぎったけれども、田舎は、それでいいのだと思う。そうやって成り立っている。この横のつながりが、3.11の時も、生きていた。
おばあちゃんに笑顔で挨拶をして別れ、軽トラックを見送りながら、私はキャベツの薬膳的効能を考えていた。
キャベツはとにかく胃腸に良い。また、熱を取り除き、ビタミンも食物繊維も豊富なので腸内環境整備に素晴らしくよいのだ。その素晴らしいキャベツを4つも頂いたわけだから、おばあちゃんの軽トラックが見えなくなる頃、私がもう一度深々とお辞儀をしたのは言うまでもない。
というわけで、ここずっとキャベツ尽くしの毎日である。
◇
キャベツは平性。涼性でも温性でもないので、体調に波のある方にはとても良い食材です。
とにかく胃腸に良いこのキャベツ。お腹のはり、食欲増進、胃もたれ、胸のつかえ、胃痛に有効です。虚弱体質や疲れやすい方にもおすすめです。
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