第9話 豆腐

 一度、夫に怒鳴られたことがある。


 普段、とても優しく大人しい彼が怒鳴ったことにとても驚いたし、ショックだった。彼は、口論の最後に、


「もう! 君は、どうしてそんなに頭が固いんだ! 豆腐になれっ!」


 そう言い放ったのだ。そして、階段を怒りに任せてドンドンと音を立てて歩いて行った。その姿を、茫然自失で見送った自分のあの時の感覚を、未だに忘れることができない。


 とてもびっくりしたし、理解できなかった。


 だから今でも、夫が、“頭固そうな人が発言するようなものの言い方”をすると、すかさず「あの時、私に豆腐になれって言ったよね?」と確認する。夫は、「本当、根に持つタイプなんだから……。過去の事は持ち出さない!」と、またプリプリと怒りだす。


 根に持つというか、私は、本当にはまだその“頭が固い”という意味と、“豆腐になりなさい”、がイマイチ感覚的にピンと来ていないのだ。だからまだ、確認したくて、理解したくて、問うている。


 どういうことなのでしょうか?



 薬膳的に言うと、豆腐は涼性。体の中の余分な熱を取るのに優れています。熱が身体にこもってしまって起きる、目の充血、口の渇きに良いとされています。また、体を潤す作用もあるので、空咳にも良いです。消化を促し、腸の渇きも潤すので、便通にも良いとされています。


 やはり、豆腐は素晴らしいですね。豆腐のような人になりたいものです。

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