第8話 さつまいも

 この時期さつまいもを頂くと、「そうだ! スイートポテトを作ろう!」と、毎回思うんだが、作れたためしがない。


 さつまいもを柔らかくして、軽くマッシュするところまでは行くんだが、そこで力尽きてしまう。はちみつを入れたら食べれるのではないか? と誘惑に駆られ、はちみつを入れ、ねちょねちょっと混ぜてしまう。それをつまみ食いすると、


 「……美味しい。もういいか」


 そう思ってしまう。


 今年はさつまいもを10本も頂いた。1本がやたらと太くて大きいので圧倒され、おそらく食べきれないだろうと思うとなんか手がつかず、キッチンに置きっぱなしに……。


 けれど、さつまいも。


 勿論身体にとても良い。食物繊維もビタミンCも豊富。毎日食べれば、腸も肌もそりゃ綺麗になるさ。


 食べねば。


 夜、キッチンで太いさつまいもと対峙しながら、どうやって料理しようか考ていた。結局私の思考は同じところに辿り着く。そうだ!スイートポテトを作ろう! と思っていると、


「アハハハハ! 今年もねちょねちょするんだねっ!」


 と、夫が笑いながら後ろを通過した。


 確かに。きっとそうなるだろうという予感。だが私は、スイートポテトが食べたい。頑張れ私!とエールを送ったもののすぐに考え直した。


 目標は、時に低い方が良いのだ。


 もう、マッシュされ、はちみつを混ぜたあれに、今年はシナモンとバターを混ぜる事を目標にしたら良いのではないだろうか。だって、そうすれば少なくとも、また挫折したと自分を不甲斐なくは思わないだろう。


 という訳で、翌日作りました。


 簡単です。レンジでチンして柔らかくして、軽くマッシュして、バターとはちみつとシナモン入れてねちょねちょと混ぜたものを、おはぎくらいの大きさになるように取り、サランラップでくるんとまいて、いくつもさつまいもの団子が出来上がりました。


 そこに、ちょうど仕事に行く前の夫が来て「何かない? 小腹が空いた」と言ったもんですから早速、「どうぞ」とラップに包まれたさつまいも団子を渡しました。


 彼は受け取るなり、


「アハハハハ! 年に一回、さつまいもを、やっぱりねちょねちょするんだね!」


 と言い、ニヤニヤしながらひとくち食べて、


「うん。今回はシナモン入れたんだねぇ~! もう少しバターを入れたらよかったのにぃ~! 健康的な味だねぇ~。これ、うちの嫁が作ったんです!って職場にもってこうかなぁ~」


 などと言い、ラップに包まれているさつまいも団子をいくつか手に取り始めた。


 ……やめてくれ。


 ムスッとして、「やめてよう!」と言うと、夫は、「バカだな~! 冗談に決まっているじゃない!」と笑った。


 ……なんだろう。なんか、悲しかった。



 *


 さつまいもは、「平性」といって、寒性でも温性でもありません。虚弱体質改善に良いです。気虚という、元気が出ない状態を改善します。疲れやすい、下痢をしやすい、ふわふわ感やめまいがある、という方は是非沢山お召し上がりくださいませ。


 ちなみに、シナモンは熱性。ハチミツは温性です。冷え性の方には、良い味付けに方法です。


 (冷え性の夫を思ってシナモンとはちみつを多めに入れたのにっ!)


 ちなみに、バターは寒性です。


 (冷え性の夫を思ってバターを少なめにしたのにっ!)


 これから2回目のさつまいも団子を作ります。今度は、バター多めにしてやります。

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