出会い
――誰だろう?獣のような耳や尻尾が付いているので獣人種だと思うが。
「初めまして、私はルナ。訳あって1人で旅をしている獣人種です」
自己紹介されたのでこちらも簡単に自己紹介を済ませなぜ昨晩攻撃してきたのか質問することにした。
「すいません、私夜になると攻撃的になってしまうもので....」
大体の状況は掴めたが最後に何か聞きたかったんじゃないかと聞いてみた。
「私重度の方向音痴でよくモンスターの巣とかに入っちゃってろくに旅ができないんです」
「良ければ私を旅に同行させてください!」
「うん!もちろんだよ!」
まさかこんなに早く仲間が見つかるとは思わなかった。まあ夜が怖いけど…
「あの、それでなんですけど…」
……あ、まずい。条件とかあったんだ。
「お、お金は持ってないよ?」
「違います!その…私こういうの初めてで…。」
差し伸べられた手を数秒見つめてみる。 お金じゃなくて…えっと…
「あはは…握手とかしてみたかったんですよ。」
引っ込む手を無理矢理掴み抱きついた。
ルナの体はあまり柔らかいとは言えず栄養を摂取できてないのだろうか少し骨ばっていた。抱き心地がいいとはお世辞にも言えない。しかし、何か私の中で昂ぶるものがあった。
『可愛い。』『護ってあげたい。』『助けたい。』
グルグルと頭の中で渦巻く。
「あの…イレイナさん…?」
鈴を転がすような声で呼ばれて私の意識は戻ってくる。
「えっと…大丈夫ですか?」
「えっ!ああ、大丈夫大丈夫!」
その瞬間ーー
腹鳴が起きる。よくよく考えると朝から何も食べていない。
『ルナちゃん』『優しい』『食べてしまいたい』
自分で自分が信じられなかった…
「あの~...イレイナさん?私たちこれからご飯なので、一緒に食べましょう!」
ルナはそう言うと、部屋から出ていった。
どうやら、私の腹鳴はルナまで聞こえてしまっていたようだ。...恥ずかしい。
しかし、ここでルナが気を利かせてくれなかったら私は何をしていたか、自分自身の事なのに分からなかった...だけど、知らなかった私を知ることができて良かったと思うところもあった。
...遅い。私はルナが帰って来るのをこの部屋で待っていたが、ドアの向こうで物音と誰かと会話する声が聞こえるだけで扉は開く気配がなかった。何かあったでは?と、私はこの部屋から出ることにした。
しかし、ドア開けようとした瞬間。
「コロス」と明瞭に聞こえた。
イレイナでも扉越しだがその言葉の重みは理解することができた。
そして、浮かれていたイレイナの頭は段々と冷静なっていく。
「これはいつもの狩りだ。冷静に状況を把握していこう。
まず、一人旅で方向音痴だといった。しかし、意識がなかった私をこんな文化的な場所に運ぶことができた。
さらに、扉の向こうにはルナの他に何かいる…なぜここまで矛盾した点が多いのか…」
などと考えていると扉の向こうから
「もうすぐ準備ができますからゆっくりしていてください」
とルナの声で思考が止まってしまった。
軽く返事をし、もう一度考え直すと1つの結論が出た。
「まさか、あのあたりはあれだけ歩いてもモンスターはいなかった。つまり、出される食事は雑草なのではないか。
そんなもの食べられたものじゃない…
逃げねば。」
そう思いイレイナは部屋を見渡すのであった。
部屋には2つ窓があった。そこから出れば外に逃げることができるだろう。私は窓から逃げようとした時
「お待たせしました、準備が出来ましたよ」
終わった。そう思いながら隣の部屋に行くと机の上には肉があった。そして席には獣人種らしき男の人が座っていて物珍しそうにこちらを見ている。
「人間とは珍しいな、俺はこの小屋で暮らしながら修行してるガルダだ」
自分も名乗り終えたところでルナに色々質問してみた。
「さっきコロスって聞こえたんだけど...」
するとルナはモンスターの話ですよと笑って言った。どうやら周辺にモンスターが居なかったのはガルダさんの修行で大半を殺してしまったらしい。
どこの戦闘民族ですか貴方は。
つい出してしまいそうな疑問を喉の辺りで押し止めた。
じっと見つめてしまったからだろう。ガルダがこちらを怪訝そうに睨んできた。
ふいっと顔を逸らし料理に手をつける。
「ん、美味しいねこれ!なんのお肉?」
「人間…」
「え?」
――
―――
――――
こんな事が起きるなんて誰が予想出来るのだろう。
初めての事が1日に何回も体験出来た。
――初めて人間を見た
――初めて仲間が出来た
――初めて…
この全部を目の前の貴女に貰った。
そう全く会うことがなかった―――
「人間…」
「え?」
しまった、どうやら口に出ていたらしい。慌てて口を抑えるが時すでに遅し。
目の前の人は瑠璃色の瞳でこちらを見つめている。
「あ、あの~」
「おええええええええええええっ!!」
発言をするよりも先に、目の前の少女は無理矢理指を口に捩じ込むと先程まで食べていた鶏肉を液状化させて吐き出した。
私は動けなかった。
「だ、大丈夫ですか!イレイナさん!」
状況が飲み込めてないルナはイレイナに駆け寄ろうとする。
その瞬間。
「近寄るな!」
目の前の少女は力の限り叫ぶ。瑠璃色の瞳に涙を浮かばせ小さな体躯を震わせている。
と、とにかくイレイナさんに水を、ちゃんと説明しないと
ルナが机の上から水を取ろうとした瞬間、イレイナは立ち上がり、部屋から出て行った。
「なんだ~?あのイレイナといった人間は...急に吐きやがった。飯が不味くなるだろうが。それにしても、この鶏肉美味いなあ。さすが、俺が狩ってきた肉だな!」
ガルダはそのまま食事を続け、イレイナには興味がないようだ。ルナはガルダは頼りにならないと思い、イレイナを追いかけた。
イレイナさん、きっと勘違いをしている...はやく誤解を解かないと!
イレイナを寝かせていた部屋に行くと、イレイナからは明らかに敵意を感じる体勢で武器を構えて訳のわからないことを叫んでいた。
「あなた方が、私を喰らうなら...私があなた方を先に喰らってやる!」
素人からでもわかる。イレイナは今、正気を失っている。はやく、落ち着かせないと...私は喰われる!
「ファイアーアロー」
そうイレイナが叫ぶと矢の先が燃え始め、ルナに向かって飛んでいく。
至近距離であったがルナは避けることができた。しかし、隣の部屋にいたガルダの方に飛んでいきテーブルの肉に刺さるのであった。
「バカヤロー、鶏肉が焦げるじゃねえかぁ!」
ガルダがそう叫ぶとあたりの空気が震えルナもイレイナも耳を抑え、当のガルダはフォークとスプーンを進めるのであった。
「やっぱ焦げてんじゃねぇか…」
そう悲しそうに言うガルダは食を進める。
イレイナは正気を取り戻し、呆然としていた。そこでルナは肉のことを説明し、自分が勘違いしていた事を知り2人に深く詫びるのであった。
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