14-4

 風にたなびくマント、剣を構え身を挺して仲間を守る姿は、まさに勇者そのもの。配信で何度も見た、あの異世界転生者のアレクが、目の前に立っていた。


「あまり無茶をしないでください、和尚さん。田中だっているんですから」


「すまん、すまん。つい興が乗ってしまった」


「ちょっと、あんた遅いのよ!ちゃんと“例の物”は回収できたんでしょうね?!」


「物呼ばわりは失礼だよ。彼女は歴とした人間だ。目的は果たした。ゴールデンキングダムに帰還しよう。すぐにでも怖い人がやってくる」


 何か話し合っている。一体なんのことだ。


「おい、お前らの後ろで簀巻きみたいにされてるのは誰だ。って、まさか、嘘だろ?」


 小林くんは、いち早く何かに気づいたらしい。風で砂塵は飛んでいき、俺も驚きの光景を目にしてた。アレクの後ろに、和尚と田中に加え、もう一人いた。リタだ。ハルモニアが保護したベイル人のリタがいる。


「あぁ、彼女はリタという名前なんですね。まったく、とんでもないことをしでかしましたね。異世界渡航を防ぐだけならいざ知らず、まさか異世界人を拉致するとは。人道に反するとは思わなかったんですか?」


 アレクの目は侮蔑そのものだ。加えて、深い憎悪、嫌悪を感じる。


「それはこっちのセリフだ。彼女はハルモニアが人道的に保護している。お前こそ何するつもりだ。彼女を見ろ!怖がってるじゃないか!」


「小林の言う通りだ。彼女から直接聞いた。リタはベイルで事実上、強制徴用された身だ。これ以上争いに巻き込むのはやめてもらおうか」


 突然、現れたのはエステルだった。だが、随分と服がボロボロだ。その姿を見て、小林くんは激しく動揺している。


「エステル、大丈夫か!誰にやられた!」


「あぁ、これは心配ない。治癒魔法ですぐ治る怪我だ。それより、みんなすまない。遅れてしまったな。アレク一味の強襲で、後手に回ってしまったが、彼らの狼藉もここまでだ」


 エステルは杖を掲げ、魔法に魔力を貯めているようだ。凄まじい杖の先端に、色とりどりの光が舞い散っている。


 だが、すかさずアレクはエステルの懐深く入り、剣を振おうと構えている。まるで、瞬間移動だ。


「魔法ではあなたに敵わなくとも、僕には剣がある。残念ですが、これでお終いです」


 アレクは剣を振るが、凄まじい金属音と共に、剣の動きが止まった。


「あなたも随分、チートが過ぎるようで」


「褒めてくれてるのか?私はラークスの天下無双の剣士、勇者ヨシオの妻だ。この程度の剣技、持ち合わせているさ」


 エステルの杖は二つに分かれていた。そして分かれた一方の杖には白鞘のように杖から刀が伸び、アレクの剣を受けていた。あれは、仕込み杖ということか。


「なぁ、銀・・・。俺、エステルが刀振れるって初めて知ったんだけど、あれって昔からなの?」


「あぁ、あれは勇者直伝の剣術だな。魔法使いであればどうしても近接戦闘が弱点となるから、勇者がエステルに教え込んだんだよ」


「どんだけハイスペックなんだよ、エステルは」


 アレクは仕方なく間合いをとりなおし、構え直した。


「ハルモニアよ、我が声を聞け。これより、リタをアレクたちから奪還する。私はアレクを抑える。残る二人とリタを任せた」


 言うや否や、エステルは魔法を放ち、アレクへ攻撃を仕掛けた。和尚と田中は撤退する動きを見せたが、こちらはすかさず銀とカリフと銀が一斉に仕掛け、リタの奪還を試みている。


 異世界転生者達とエステル達との戦闘は一瞬で激化し、あたりは剣戟と魔法が飛び交い、俺なんかが援護に回ることなどできなかった。

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