3 地下実験都市オスロ
話がまとまった。ほぼ強制に近いが、俺たちはハルモニアのやろうとしていることに共感を覚えたことは間違いはない。ここで俺たちは晴れて再就職先を手にしたわけだ。
俺達は再び市村とエステルの案内のもと、俺達が今いる施設の案内や仕事仲間を紹介する運びとなった。
市村に先導され俺達はさらに森の奥へと移動する。するとだんだん崖のようなものが見えてきたが、よく見るとそれは崖に見えるように施されたコンクリートの壁だった。そこには金属製のドアがあり、俺は市村にドアを開けるよう指示される。
おそるおそる扉を開けたその先には、驚く光景があった。
森の景色に変わって、今度は賑やかな街の景色が広がっていた。街と言っても、その様子は俺達が見慣れている現代社会のものではない。北欧風の建物や、日本語まじりの見たことのない言葉が書かれた看板が至る所にかけられている。だが、道は車が走れるよう舗装もされ車も走っていれば、馬車もいる。現代風の建物もそこかしこに点在していて、現代とファンタジーを折衷したような街並がそこにはあった。
さらに驚くべきは、道往く人々だ。中核世界の恰好をした人間だけでなく、エステルのようなエルフの他にも、背が低いが筋骨隆々で髭を蓄えた男達、獣の姿をしているが、服を着て二本足で歩いている動物達、動物の耳やしっぽを生やした人間、いかにもなファンタジーな恰好をした人間もいる。
「おおぉ・・・」
俺達はただ呻くことしか出来なかった。
「市村さん、この街は一体・・・」
「ビックリしたでしょうね。ここは地下実験都市オスロ。異世界との共存を目的として建設されたラークスとの交流都市“オスロ”です。そしてここは街の中心地ですね。一通り異世界対策室の部署を案内しながらあなた方の配属先兼住居に案内します。こちらへどうぞ」
近くの道路の脇にはジープが駐車してあり、軍服を着た男が市村とエステルに敬礼をする。答礼をする市村は、俺達に軍服の男を紹介した。
「紹介します。彼は本日運転を担当してくれる小林曹長です。あなた方と同じハルモニアの部隊の先輩になる人だから仲良くしてくださいね」
俺と同じか少し下くらいの年のように見えるが、みるからに歴戦の兵士と言った風格がある。敬礼されるが、俺は立礼し応える。巴ちゃんもどう挨拶を返したらいいかわからずあたふたしている。とりあえずは会釈で誤摩化すよう耳打ちしておいた。
「そう慌てなくとも大丈夫ですよ。こんななりをしてますが異世界対策室はガチガチの軍隊ってわけじゃありませんから。フランクにいきましょう」
そう言うと、小林曹長は爽やかに笑う。
「そうですか。軍服を着ているので、なんかこう・・・もっと厳格なものかと」
何気ない巴ちゃんの反応に、皆に笑いが溢れる。
「驚きました?」
「はい、少し」
先ほどとはうってかわって、市村の顔には笑顔が溢れている。
「普段からキッチリカッチリしてると疲れてしまいます。そこはメリハリをつけていきましょう。常に余裕を持って行動できないと、イザという時にすぐに限界がきてしまいますから。特にこの仕事は想定外の事態が日常茶飯事なので」
市村はおどけて答える。なるほど、確かにこれぐらいの軽さと余裕がなければ本当に厄介な事態が起きた場合にすぐ対処しきれないかもしれない。
「それにしては、規律が随分行き届いてる様に見えます」
俺は率直な感想を述べた。態度は軽く余裕が見えるが、とはいえその物腰は練度の高さを伺わせるものがあると感じたからだ。
「異世界対策室はもともと敵性異世界からの防衛を目的とした特殊部隊が元となってできた組織です。そのため、軍出身の人間が多く自然と軍規じみた風紀になりがちですが、職員には民間から抜擢した技術者や研究者も多いので、そこはうまいことなぁなぁな感じでやっています。上層部には異世界との外交の為に政府関係者も働いてますし、多少固いのは仕方ありませんがね」
小林曹長はおどけながら話す。
「市村さんも、軍隊出身ですか?」
巴ちゃんも、少しずついつもの様子が戻ってきたようだ。
「はい、そうです。軍にいた時に比べ、ここは女性職員も多いので楽しいですよ。それでも私達の部署は女性が少ないので、三次さんがきてくれて嬉しいです」
「あっ、巴でいいですよ。同じ仕事仲間になるのでしたら、後輩にあたるわけですから、そう呼んで下さい」
早速、巴ちゃんの気風の良さが出ている。和やかに会話している二人をみて、俺はなんだかホッとした。
挨拶も程々に、俺達は小林曹長が運転するジープに乗り込み、地下施設を巡ることになった。
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